用語

パッド

パッド

8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

自動車・輸送機器

ブレーキパッド

brake pad

ディスクブレーキで、回転するブレーキローターを両側から挟んで摩擦で車を止める消耗部品。樹脂で固めたレジンモールド材と、金属粉を焼き固めた焼結材に大別され、すり減ると交換する。

車検の前にフロントのパッドの残量を測っておく。

半導体・電子部品

電極パッド

pad (bonding pad)

半導体チップや基板の表面にある、外部とつなぐための小さな金属の接点。ボンディングパッドは、細い金属線のボンディングワイヤやバンプ(突起電極)を接続する場所で、シリコンチップ側ではアルミニウムで作ることが多い。

ワイヤーボンディングの前に、チップ上のパッドの表面状態を確認する。

音響・レコーディング

パッド音色(シンセパッド)

synth pad

シンセサイザーで、ゆっくり立ち上がって長く伸びる持続音の音色。曲の背景に敷いて雰囲気や奥行きを出す役目で、DTMでは和音や持続音として長く鳴らして使う。

サビの手前でパッドを重ねて、空間を広げた。

音楽(演奏・楽器)

ドラムパッド(電子ドラムの打面)

drum pad

電子ドラムやサンプリングパッドで、スティックや手で叩く打面。内蔵センサーが打撃を信号に変え、音源モジュールがドラムなどの音を鳴らす。静音性が高く、自宅練習やライブ、レコーディングで使われる。

ライブでは、生ドラムの横にサンプル再生用のパッドを置いている。

ゲーム・eスポーツ

ゲームパッド

gamepad

家庭用ゲーム機などで使う、両手で持ってボタンを押して操作する入力装置。ジョイスティックと区別するときに使う語で、ファミコン以降は単に「コントローラ」と言えばこれを指すことが多い。十字キーやアナログスティックを備えるものが多い。

このゲームはキーボードよりパッドでの操作を想定して作られている。

介護・福祉

尿とりパッド

incontinence pad

大人用紙おむつの内側に重ねて、吸水量を補う吸収材。排泄が少なければパッドだけを交換すれば済むので、おむつ全体を替える回数を減らせる。くしゃみなどでの少量の尿もれに使う尿もれパッドとは別の用品で、介護では尿量や夜間の長時間用など、吸収量に合わせて選ぶ。

夜間は吸収量の多いパッドに替えて、おむつと重ねて使います。

医療機器

電極パッド

electrode pad

AED(自動体外式除細動器)などの除細動器で、患者の胸に貼る電極。心電図の解析と電気ショックの通電の両方を担う。肌との間に空気が入ると電気が伝わりにくくなるため、すき間なく密着させて貼り、胸が濡れていれば拭き取る。使い捨ての消耗品で、期限がある。

電極パッドの使用期限は、本体の点検と一緒に確認します。

印刷・DTP・デザイン

パッド印刷(タンポ印刷)

pad printing

柔らかいシリコーンゴムのパッドで、凹版にのせたインキを受け取って対象物に転写する印刷方式。パッドが形状に沿って変形するため、曲面や凹凸のある面にも印刷できる。マグカップや自動車の内装部品、医療機器、電子機器のボタンやスイッチの印字などに使う。

ボタンの表面が曲面なので、パッド印刷で文字を入れる。

柔らかい語で呼ばれる、硬いパッド

ブレーキパッドは硬い。樹脂で固めた材か、金属粉を焼き固めた材で、すり減れば交換する。ところが、パッドという語は柔らかいものから始まっている。

語源事典の Online Etymology Dictionary によれば、英語の pad は1550年代に「寝床にする藁の束」、1560年代に「柔らかい鞍、クッション」の意味で現れる。ただし語の出どころははっきりしない。硬い部品がこの語で呼ばれているのは、ローターに押し当てる「当て物」だからだろうか。そう読めば筋は通る。ただ、これは私の推測で、裏づける資料は見つけていない。

音のパッドになると、出どころはさらに曖昧になる。シンセの持続音色を pad と呼ぶ理由について、「pad out(埋める、膨らませる)から来た」という説明はよく見かける。一方、音楽誌 MusicTech は、いつ、どこで生まれた呼び方か誰にもわからないと書いている。私の見立てでは、和音を長く伸ばして曲の隙間を埋める役目を考えれば、それらしくは聞こえる。それでも記録の裏づけはない。

ゲームのパッドは、出来事がはっきりしている。1982年、任天堂は携帯機のゲーム&ウオッチ「ドンキーコング」で、ジョイスティックを載せる代わりに、平らな十字形の操作面を作った。考案者は資料により異なる。携帯性を損なわないためだったという。この十字は、ファミコンの海外版であるNESで「+Control Pad」の名で売られた。パッドは、親指で押す平らな面の名前になった。

電子ドラムのパッドは、スティックで叩く面である。ゲームのパッドと同じく、人が触れる平らな面がパッドと呼ばれている。

柔らかいままのパッドもある。介護では、大人用おむつの内側に重ねて吸水量を補う吸収材を、尿とりパッドと呼ぶ。印刷のパッド印刷(タンポ印刷)では、柔らかいシリコーンゴムのパッドがインキを受け取り、マグカップのような曲面にも転写する。AEDの電極パッドは、胸にすき間なく貼って、心電図の解析と通電の両方を担う。

そう並べると、シンセのパッドだけが違うとわかる。ブレーキは押し当てる面、ゲームは押す面、電子ドラムは叩く面、電極は貼る面を持つのに、音色のパッドには触れる面がない。ゲームのコントローラの十字キーに親指を置いてみる。そこは「パッド」と呼ばれる場所だが、同じ名前の音色を鳴らすのは、シンセサイザーの鍵盤だ。