PC
ピーシー
6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
プレストレストコンクリート
prestressed concrete
コンクリートに鋼材(PC鋼材)で事前に圧縮力を与え、引っ張りやひび割れに強くした構造材料。支間の長い橋や高架によく使われ、PC橋と呼ぶ。現場で型枠を組んで打つ場所打ちと、工場製作の桁を架設するプレキャスト桁がある。
この橋梁は支間が長いので、鉄筋コンクリートではなくPC橋で計画している。
パーソナルコンピューター
personal computer
個人や職場の一人が使う小型のコンピューター。デスクトップ型やノート型を含む総称で、厳密な定義はなく、オフィスで使う端末を指すこともある。システム開発の現場では、サーバーや組み込み機器と区別して、開発者や利用者の手元の端末を言うときに使う。
検証用のPCを各メンバーに1台ずつ手配してください。
ポリカーボネート
polycarbonate
炭酸エステル結合を持つ熱可塑性のエンジニアリングプラスチック。樹脂のなかでも耐衝撃性が高く、透明で耐熱性や耐候性にも優れる。ガラスの代わりに使う板材や、レンズ、電子機器の筐体などに加工される。
割れにくさを優先して、窓材はアクリルではなくPCシートを選んだ。
プレキャストコンクリート
precast concrete
工場であらかじめ製作した鉄筋コンクリート部材。現場では運搬して組み立てるだけなので、工期の短縮と品質の安定、コスト低減につながる。鉄骨の骨組にはめ込むPC造は賃貸マンションなどに多い。プレストレストコンクリートと区別するため、PCaと書くこともある。
外壁はPC版を工場で製作し、現場で取り付ける計画です。
食後
post cibum
処方で薬を飲むタイミングを示すラテン語由来の略記で、「食後」の意味。対になるACは「食前」。主に英語圏の処方箋や医学文献で使われる。
処方の記載は1日3回PC(食後)だった。
ペーパークロマトグラフィー
paper chromatography
ろ紙を固定相にして、試料中の成分を移動する速さの違いで分ける平面クロマトグラフィーの一種。紙の端に試料をつけ、溶媒を染み上がらせて成分を分離する。簡便で色素やアミノ酸などの分離・確認に使われたが、現在は多くの用途で薄層クロマトグラフィー(TLC)に置き換わり、教育用にも使われる。
色素の分離実験では、PCで展開した後に各スポットの移動距離を測った。
PCの二文字は、一番遅く来た機械が取った
1981年8月12日、IBMが5150を発表した。製品名はIBM Personal Computerで、のちにIBM PCと呼ばれる。ほどなく、PCといえば机の上の機械のことになった。
考えてみると不思議である。この二文字を使う先客は、すでに何人もいたはずだからだ。
いちばん古いのは、コンクリートだろう。フランスのウジェーヌ・フレシネーが、鋼線で先に圧縮力をかけてコンクリートを強くする方法の最初の特許を取ったのが1928年。これがプレストレストコンクリートの出発点とされる。1944年には、マーチンとシンジがペーパークロマトグラフィーを発明し、8年後の1952年にノーベル化学賞を受けた。ポリカーボネートは1953年、ドイツのバイエルのシュネルと、アメリカのGEのフォックスが、ほぼ同じ時期に別々に見つけている。どれも、機械のPCより前に生まれていた。ただし、これらの語が当時すでにPCと略されていたかどうかまでは、確かめられていない。
それでも二文字を持っていったのは、機械のほうだった。理由は、使う人の数にあると思う。桁を設計する人や、ろ紙で色素を分ける人と違って、パソコンは一人に一台ずつ行きわたる。これは推測である。
先客が消えたわけではない。ノートパソコンの外装には、ポリカーボネートとABS樹脂を混ぜた合金(PC/ABS)を使うものがある。部品表に「PC/ABS」と書かれていて、機械本体のことだと読む人はいない。処方箋の「1日3回PC」も、ラテン語のpost cibum、食後である。ペーパークロマトグラフィーは、いまは薄層クロマトグラフィー(TLC)に置き換わった用途が多く、教育の場でよく見かける。どれも、読む紙が違うから共存できている。
共存できない場所が、一つだけある。建設である。
プレストレストコンクリートは材料の性質の名前で、プレキャストコンクリートは工場で先に作るという作り方の名前だ。軸が違うので、一つの部材が両方に当てはまる。支間の長いPC橋は、工場で作った桁を現場で架けるプレキャスト桁で造ることがある。その桁は、プレストレストでもあり、プレキャストでもある。同じ説明書に二つのPCが載ってしまう。だから建築の側は、プレキャストをPCaと書くことがある。末尾の小文字一つで、区別をつけている。
いま机の上にノートパソコンがあるなら、外装を指でたたいてみてほしい。樹脂のPC/ABS合金の機種なら、機械のPCを、素材のPCが包んでいる。