PD
ピーディー
7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
プロデューサー、プログラムディレクター
producer / program director
テレビ番組の制作現場で使われる役職の略称で、二つの意味がある。一つはプロデューサー(番組の企画・予算・人員を束ねる製作責任者)。もう一つはプログラムディレクターで、スタッフの中心となって演出を担い、現場全般の指揮をとる担当者を指す。どちらの意味かは局や番組の慣習によって違うため、前後の文脈で読み分ける。
今夜の打ち合わせはPDも同席するので、企画書の予算欄を先に直しておいて。
物的流通(物流)
physical distribution
生産者から消費者へモノを動かす輸送・保管・荷役・包装などの活動を指す、物流の元になった英語。1950年代中ごろに米国から日本へ導入され、1960年代末から70年代にかけて産業界に広まった。調達から販売までを戦略的に管理するロジスティクスより狭い概念として、区別して論じられることがある。
古い社内資料の「PD」は、今でいう物流のことだと読み替えた。
腹膜透析
peritoneal dialysis
腎不全の治療法の一つで、腹腔に透析液を入れて出し入れし、腹膜を通して老廃物や余分な水分を取り除く。自宅で行え、血液透析に比べて心臓への負担が小さいとされる。日本の透析患者のうち、腹膜透析を受ける人は2014年末で約2.9%と少数。カルテや学会ではHD(血液透析)と対比してPDと書く。
この患者さんは来月からPDに移行するため、カテーテル挿入術の日程を組む。
USB PD(USB電力供給規格)
Power Delivery
USB Type-Cのケーブル1本で、データとあわせて電力を柔軟に供給するための規格。2012年に最初の仕様が出て、当初は20V・5Aで最大100Wだった。2021年のRevision 3.1で28V・36V・48Vが加わり、最大240Wまで拡張された。同じPDでも、フォトダイオード(photodiode)を指す電子部品の用法とは別物。
このノートPCの充電にはPD対応の65W充電器が必要だ。
薬力学
pharmacodynamics
薬が作用部位に届き、受容体に結合して薬効が現れるまでの、薬の体への作用を扱う分野。濃度の時間変化を扱う薬物動態(PK)と組み合わせて、PK/PDとして創薬や用量設計に使われる。血中濃度と効果の関係を式で表し、投与量や間隔を決める材料にする。
前臨床のPK/PD解析で、効果が出る最低濃度から臨床の初期用量を見積もった。
パブリックドメイン
public domain
著作権の保護期間が切れた、または権利が放棄されて、誰でも自由に使える状態の著作物。日本を含む多くの国では、保護期間は原則として著作者の死後70年で、期間満了の翌年の元日にまとめて保護が切れる。ウィキメディア・コモンズでは、国ごとの保護期間切れを示すテンプレート名に「PD-国名」と略して使われている。
この画像はPD扱いなので、許諾を取らずに転載できると判断した。
デフォルト確率
Probability of Default
融資先が一定期間(通常は1年)のうちに返済不能となる確率。債務者格付の区分ごとに推計し、貸倒れ時の損失率(LGD)や貸倒れ時の残高(EAD)と組み合わせて、予想される損失額や貸出金利の水準、自己資本比率規制の信用リスク資産の計算に使う。内部格付手法では、基礎的手法で銀行がPDだけを、先進的手法でPDとLGDなどを自行で推計する。
この格付区分のPDは0.5%と置いているので、貸出額が大きい先ほど予想損失も大きく出る。
PDは、隣に書かれた二文字で決まる
腎臓内科のカルテの「PD」と、薬の用量設計の資料にある「PD」を、取り違える人はまずいないだろう。同じ二文字なのに、なぜ迷わないのか。
PD がひとりで書かれていないからだ。カルテでは HD(血液透析)と対比して書く。日本の透析患者のうち腹膜透析を受ける人は2014年末で約2.9%と少数で、HD の隣に置かれて、PD の位置が決まる。薬の資料では PK/PD と続く。PK は濃度の時間変化、PD は効果を扱う薬力学で、二つを組み合わせて投与量や間隔を決める。
銀行も同じ型をしている。PD(デフォルト確率)は、LGD(貸倒れ時の損失率)と EAD(貸倒れ時の残高)と組んで、予想される損失額になる。内部格付手法の基礎的手法では、銀行が自行で推計するのは PD だけ。先進的手法では PD に加えて LGD なども自行で推計する。三つ組のうち、どこまでを自分で見積もるかが、手法の名前の違いになっている。
法律の PD は、ウィキメディア・コモンズの「PD-国名」というテンプレート名のハイフンの先が相方だ。国ごとに保護期間が切れたことを示すので、国名がなければ何のPDか決まらない。物流の PD は、調達から販売までを戦略的に管理するロジスティクスと並べて、それより狭い概念として論じられることがある。電子では「PD対応の65W充電器」のように、ワット数と並んで現れる。
放送だけは、こうはいかない。プロデューサーかプログラムディレクターかは、局や番組の慣習によって違い、前後の文脈で読み分けるしかない。隣に決め手の文字がないぶん、取り違えの余地がいちばん大きい。ここは、PD が相方を持たない唯一の例だと、私は読んでいる。ただ、現場の書式をすべて確かめたわけではないので、断定はしない。
カルテでは、2.9%の側にいる腹膜透析は、HD と並べて書かれてはじめて、PD と読んでもらえる。