略語

PE

ピーイー

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

証券・投資

プライベート・エクイティ/株価収益率

private equity / price earnings ratio

投資の現場では、未公開企業の株式を取得して経営に関わり、価値を高めてから売却する投資(プライベート・エクイティ)を指し、これを行うファンドは PE ファンドと呼ばれる。別の用法として、株価を1株当たり利益で割る株価収益率(PER、割安・割高を見る指標)の略として使われることもある。同じ「PE」でも、運用や買収の話なのか株の指標の話なのかは文脈で決まる。

PE ファンドが非上場の部品メーカーを買収し、3年かけて立て直してから売却する計画だ。

会計・税務・監査

恒久的施設

Permanent Establishment

「恒久的施設」という用語は、一般的に、「PE」(Permanent Establishment)と略称されており、次の3つの種類に区分されています。

出典:国税庁 タックスアンサー No.2883

国際課税で、外国の企業や非居住者が日本国内に持つ事業の拠点を指し、日本で課税されるかどうかを判断する基準になる。支店・事務所・工場などの事業を行う場所、1年を超えて行う建設工事などの現場、反復して契約を結ぶ権限をもつ代理人などの3種類に分けて考える。判定は形式ではなく、機能の面を重視して行うとされる。

海外の親会社が日本に倉庫を持つと PE に当たるか、顧問税理士に確認した。

素材・化学

ポリエチレン

polyethylene

エチレンを重合してつくる最も単純な構造の高分子で、樹脂の種類を示す略号として PE と書く。容器や包装用フィルム、袋、配管など用途が広く、図面や仕様書では「PE容器」「PE袋」のように素材名の代わりに使う。密度の違いで LDPE・HDPE などに分けられる。

この容器の材質は PE だが、耐熱温度が低いので電子レンジには使えない。

医療・医学

肺塞栓症/血漿交換

pulmonary embolism / plasma exchange

診療では、血栓などが肺動脈をふさぐ肺塞栓症(pulmonary embolism)の略として使われる。長時間の臥床や手術後などに起こりうる病気で、カルテや検査の指示で PE と略される。別に、患者の血漿を新しい血漿に入れ替える治療の血漿交換(plasma exchange)を PE と書く例もある。

術後の呼吸苦で PE を疑い、造影CTをオーダーした。

機械・生産

保護接地

protective earth

モーターやドライバ(駆動装置)など電気機器の端子表示で、故障などでモーターやドライバのケースに危険な電圧が生じたとき、それを大地へ逃がして感電を防ぐための接地端子を示す。適切な太さの PE 線で保護導体につなぐよう指示され、電源線のノイズを逃がす役割もある。装置の据え付けでは、通電前に接続を確かめる端子になる。

ドライバの PE 端子を盤の接地バーに接続してから通電する。

半導体・電子部品

プリンテッド・エレクトロニクス

printed electronics

印刷技術を使って電子回路や素子をつくる技術を指し、市場調査やメーカーの資料では「プリンテッド・エレクトロニクス(PE)」と略記される。銀やカーボンのペーストをスクリーン印刷する方式が中心技術に挙げられ、大面積化・低コスト化やフレキシブルな製品への展開が期待されている。実用化には材料・プロセス・デバイス・評価の各技術を組み合わせた開発が必要とされる。

フレキシブルセンサーの試作に、PE のプロセスで配線を印刷した。

印刷・DTP・デザイン

印刷所側の誤り(校正での区分)

printer's error

校正刷りに入れる修正の区分で、印刷所側のミスによる誤りを示す。原稿どおりに組まれていない箇所がこれにあたり、印刷所の負担で直される。原稿を渡したあとに著者・発注側が加える変更は AA(author's alteration)と呼んで区別し、こちらは追加費用の対象になるのが一般的とされる。主に英語圏の印刷・出版実務で使われる区分。

校正で赤を入れた箇所は、原稿と違う PE なので追加費用はかからない。

校正紙のPEは、誰の負担かを決める印

校正刷りの余白に、赤字で「PE」と入っている。直すのは誰で、その費用は誰が持つのか。

英語圏の印刷・出版実務では、PEは printer’s error、印刷所側のミスを示す区分だ。原稿どおりに組まれていない箇所がこれにあたり、印刷所の負担で直される。原稿を渡したあとに著者や発注側が加える変更は AA(author’s alteration)と呼んで分けられ、こちらは追加費用の対象になるのが一般的とされる。The Book Designer の記事は、この AA を避けるべきものとして論じている。二文字の違いで、請求書の行き先が変わるわけだ。

同じ「印刷」の字を含むPEが、電子部品にもある。プリンテッド・エレクトロニクス、印刷技術で電子回路や素子をつくる技術だ。矢野経済研究所の市場資料はこの名でPEと略記し、銀やカーボンのペーストをスクリーン印刷する方式を中心技術に挙げている。刷るものはインキではなく、配線そのものである。

印刷所の机の上では、PEは「刷り上がりの誤り」の符丁になる。電子部品の工場では、PEは「刷って作るもの」の名前になる。一つの業界の中なら取り違えようのない二文字が、印刷という同じ作業をはさんで、誤りと製品の両方を指している。

ほかの六業界のPEは、印刷から遠い。金融ではプライベート・エクイティ(未公開企業に出資する投資)か株価収益率。会計では恒久的施設で、外国企業が日本国内に持つ事業の拠点を指す。化学ではポリエチレン、医療では肺塞栓症か血漿交換、機械では感電を防ぐ保護接地の端子だ。

並べると、印刷所のPEだけが性質の違うことに気づく。ほかは資産、拠点、素材、病名、端子と、どれも何かの名前だ。校正紙のPEだけは、間違いの持ち主を指し示す。

冒頭の赤字に戻ると、原稿と違う箇所の横に書かれた「PE」は、その箇所の直しに追加費用がかからないという印でもある。