用語

ペグ

ペグ

2つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

アウトドア・釣り・キャンプ

テント用の杭

tent peg

ペグとは、キャンプでテントやタープを設営する際、ロープを地面に固定するための杭のことです。

出典:BE-PAL(小学館)「ペグのおすすめ商品を紹介!知っておきたい選び方や使い方も解説」

テントやタープから張ったロープの先を地面に固定する杭。強風でテントが飛ばされるのを防ぐ。地面の硬さに合わせて鍛造ペグ、V・U・Y字断面のペグ、頭がフック型のものなどを使い分ける。ロープに力がかかったとき、ペグとロープが90度になるよう、テントと反対側へ傾けて打つのが基本。

地面が硬いので、ペグは鍛造のものに替えて打ち込もう。

音楽(演奏・楽器)

糸巻き

tuning peg

ギターやヴァイオリンなど弦楽器のヘッド部分にあり、弦を巻き取って張力を変え、音程を合わせる部品。弦を巻く軸(ペグポスト)と、つまみ、ギアなどでできている。ギターはギア式が一般的だが、ヴァイオリンは従来型の摩擦式のペグを使う。

チューニングが下がるので、ペグの締まり具合を見てもらった。

回すペグと打つペグ、どちらも引かれて止まっている

キャンプ場でテントのペグを打つ人と、楽器店でヴァイオリンのペグを回す人は、まったく別の作業をしているように見える。一方は打ち込んだら、あとは触らない。もう一方は、弾く前に毎回触る。動かさないための部品と、動かすための部品。同じ名前である理由は、語源にあるのだろうか。

辞書をたどると、英語の peg は15世紀なかばに中期オランダ語の pegge(栓、くい)から入ったとされる。起源ははっきりしない、という注釈つきだ。つまり最初から「何かに刺して留める棒」という広い意味の語で、テントも楽器も、その枝のひとつにすぎない。

テントのペグは、張ったロープの先を地面につなぐ。ロープに力がかかったとき、ペグとロープが90度になるよう、テントと反対側へ傾けて打つのが基本だという。強風でロープが引かれると、ペグは引き抜かれる向きに力を受ける。傾けるのは、その力を真正面から受けるためだ。地面が硬ければ鍛造のペグ、柔らかければ断面がV字やY字のものと、土に合わせて選ぶ。抜けないのは、土が棒の表面をつかんでいるからである。

ヴァイオリンのペグも、同じ目に遭っている。ヘッド部分の穴に差した丸い棒に弦を巻き、張力を変えて音程を合わせる。弦は常にペグを回す向きに引いている。それでも回らないのは、穴との摩擦で止まっているからだ。ギターのようなギア式ではなく、ヴァイオリンは従来型の摩擦式のペグを使う。弦が緩んだり、乾燥した季節に穴との締まりが落ちたりしてペグが滑るときは、ペグを穴に押し込んで締め直すと言われる。

並べてみると、こうなる。テントのペグは土との摩擦、ヴァイオリンのペグは木の穴との摩擦で、引く力に耐えている。どちらも、引かれ続けることで仕事が成り立つ部品だ。

では「動かさない」と「動かす」の差はどこにあるのか。ペグ自体は、どちらも止まっている。違うのは、止まったあとに誰かが手を出すかどうかだけだ。テントのペグは、撤収のときに一度だけ抜かれる。ヴァイオリンのペグは、止まっていた摩擦に逆らって、少しだけ回される。回し終えれば、また摩擦が受け持つ。

ギター用のギア式ペグだけを知っていると、この話は少し見えにくい。ギアが力を受け持つので、つまみを離しても弦が戻らない理由を、摩擦だと思わないからだ。楽器店で「ペグの締まり具合を見てもらった」と言うとき、見ているのは、止める力が足りているかどうかである。

土の上でも、楽器の上でも、ペグは引っ張る力が来る側の反対にいる。打つ人も回す人も、ペグを動かしているつもりで、実際には引かれて止まる位置を決めているだけなのかもしれない。