PN
ピーエヌ
6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
PN接合
pn junction(P-type / N-type semiconductor junction)
半導体の中で、P型半導体の領域とN型半導体の領域が接している部分。電流を一方向にだけ流しやすい整流の性質を持ち、PN接合ダイオードやトランジスタなど、さまざまな半導体素子に使われる。
このダイオードはPN接合の面積を広げて、大電流に耐えるようにしてある。
擬似雑音符号(PN符号)
pseudo-noise(pseudorandom noise)code
乱数列のようなスペクトルを持ちながら、決まった手順で生成される符号。送信側と受信側でまったく同じ系列を作れるため、受信側は手元で作った符号と受信信号を相関させて信号を取り出せる。スペクトル拡散通信やGPSで使われる。
GPS受信機は、受信したPN符号を手元で作った符号と相関させて、衛星までの距離を測る。
静脈栄養
parenteral nutrition
口や腸を使わず、静脈から直接栄養を投与する方法。末梢静脈から入れる末梢PNと、浸透圧が高い製剤を太い中心静脈から入れる中心PNがある。診療記録や栄養管理の場では「PN」と略して書かれる。
経口摂取が難しいため、今週からPNを開始した。
部品番号
part number
部品や材料の設計を識別するための番号。同じ設計から作った個々の現物を識別するシリアル番号とは区別される。図面、部品表、発注書などで「P/N」または「PN」と略して書かれ、品番の欄の見出しになる。
発注書のPNが旧版のままだったので、図面と突き合わせて直した。
約束手形(借入人が銀行宛に出す支払約束)
Promissory Note
借入人が銀行に対して、決めた期日に一定額を支払うと無条件に書面で約束するもの。マレーシアの銀行では、仕入れや販売など事業取引の資金を調達する貿易金融商品の名称として、PNと略して案内されている。日本の銀行実務で「PN」が通称として使われているかは確認できていない。
仕入れ代金の支払いに備えて、PNで運転資金を借りた。
呼び圧力
Pression Nominale(Pressure Nominal)
配管のフランジやバルブの圧力等級を表す記号。PN10、PN16のように数字を付け、数字は常温(20℃)でのおおよその圧力定格をバール単位で示す。実際に使える圧力は、材料や運転条件によって変わる。
図面の指定がPN16なので、フランジもPN16のものをそろえた。
「雑音」と呼ばれるPN符号を、受信機は手元で作れる
発注書の「PN」は部品番号、カルテの「PN」は静脈栄養、配管図の「PN16」は呼び圧力。どれも書いた人には迷いようがない。ただ、電子や通信の棚に並ぶPNだけは、名前に矛盾がある。PN符号の「PN」は pseudo-noise、擬似雑音である。雑音と呼ばれるものを、受信機はなぜ自分の手元で作れるのか。
答えは、まず名前の前半の pseudo(擬似)にある。PN符号は、乱数列のようなスペクトルを持っているが、決まった手順で生成される。偶然に任せた雑音ではないので、同じ手順を踏めば、送る側と受ける側で同じ系列が出てくる。Wikipedia英語版『Pseudorandom noise』も、送信側と受信側で同一の系列を容易に生成できることを条件に挙げている。
もう一つは、その同じ系列を何に使うかにある。受信機は、手元で作った符号と受信した信号を突き合わせ(相関をとり)、一致したところで信号を取り出す。GPSの衛星は、50bpsのデータを1.023Mchips/sと10.23Mchips/sの二種類のPN符号で変調して送り出し、受信機は同じ形の符号と相関させて衛星までの距離を測る、と同記事にある。このうちC/AコードはGold符号で、周期は1,023とされる(Wikipedia英語版『Gold code』)。雑音に見える信号の中から、自分が作れる形だけを拾うわけだ。
同じ記事は、暗号機器ではパターンが鍵で決まり、繰り返しの周期が百万桁に達することもあると書いている。鍵を知らなければ雑音にしか見えないが、鍵を持つ側には再現できる。「擬似」の一語が、見分けのつかない乱雑さと、再現できる規則を同時に引き受けている。
同じ半導体の棚には、もう一つのPNがある。PN接合は、P型とN型の半導体が接する部分で、電流を一方向に流しやすくする。こちらは符号の綴りではなく、半導体の型の名前だ。同じ二文字でも、pseudo-noise とは別の語である。
GPS受信機が衛星までの距離を測るとき、手元にあるのは、衛星と同じ手順で作ったPN符号である。