PO
ピーオー
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
プロダクトオーナー
Product Owner
アジャイル開発のスクラムで、スクラムチームの仕事から生まれるプロダクトの価値を最大化する責任を負う役割。プロダクトバックログ(作る機能や改善の一覧)を管理し、プロダクトゴールを伝え、項目の並び順(優先順位)を決める。スクラムガイドでは委員会ではなく1人が担い、スクラムチームの一員とされる。
この機能の優先度はPOに確認してからスプリントに入れよう。
発注書・注文書
Purchase Order
買い手が売り手に対し、品目・数量・価格・納期などの条件で購入する意思を正式に示す書類。特に海外取引では発行をもって契約成立とみなされることが多く、PO番号で取引全体を管理する。国内の注文書より契約書としての重みが強く扱われる場面がある。
先方からPOが届いたので、仕入先への手配を進めます。
経口投与
per os
ラテン語 per os(口を通して)の略で、処方や指示で薬を口から飲ませることを示す記号。静脈注射などと区別する書き方で、p.o. とも書く。注射や点滴から内服へ切り替えるときに指示簿へ記される。
明日から点滴をやめてPOに切り替える。
刺殺(野球)
putout
野球の守備記録で、打者や走者を直接アウトにした野手に付く記録。飛球の捕球、走者へのタッチ、ベース上で送球を受けて走者をアウトにする場合などが該当する。守備成績の表では補殺(A)・失策(E)と並んで PO と略される。
一塁手は刺殺の数が多くなる。
POにNを足すと、医療では逆の指示になる
指示欄に「PO」とあれば、薬を口から飲ませてよい。「NPO」とあれば、口から何も入れてはいけない。Nが1字付くだけで、指示は正反対になる。
POには、ITのプロダクトオーナー、貿易の発注書、野球の刺殺という意味もある。ただ、前にアルファベットを1字足した形が別の語として定着しているのは、ラテン語 per os(口を通して)の略である医療のPOだけだ。
医療のNPOは nil per os
医療のNPOは nil per os の略で、英語では nothing by mouth と説明される。nil はラテン語で「無」を表す語で、経口で何も摂らせない指示になる。手術や麻酔の前後に、飲食や内服を控えさせる目的で使われる。麻酔や挿管のときに、食べ物や液体が肺へ入る誤嚥を避けるためだと、看護や医療向けの解説にある。
1998年に広まったもう一つのNPO
日本でNPOと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、Non-Profit Organization の略のほうだろう。特定非営利活動促進法(NPO法)は1998年3月に制定され、同年12月1日に施行された。ローマ字の「NPO」が日本語の語彙に入ってきたのは、この法律ができた時期だとされる。その3年前の1995年は阪神・淡路大震災があり、「ボランティア元年」と呼ばれた。
こちらのNPOは、語源も分野も医療のNPOとは無関係で、3文字がたまたま一致しただけである。医療機関がNPO法人として運営される例はあるはずなので、同じ現場に両方が並ぶ場面も想像できる。ただ、実際に取り違えが起きた記録は確認していない。ここは推測にとどめる。
POの2文字には、ラテン語の「口を通して」、英語の Purchase Order と Product Owner、野球の putout と、少なくとも4つの出自がある。そのうち、1字足して有名な別の語になったのは per os だけで、指示欄にNがあるかないかが、口から何を入れるかを決めている。