用語

ポジション

ポジション

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

証券・投資

持ち高

position

株式・債券・FXなどで、売買したあとまだ決済していない保有量のこと。買い持ち高が多い状態を「ロングポジション」、売り持ち高が多い状態を「ショートポジション」、両者が釣り合った状態を「スクエア」と呼ぶ。相場が動いたとき損益がどちらに振れるかを表すため、ディーラーや投資家は常にポジションの偏りを管理する。

決算発表を控えて、ポジションを一度スクエアに戻しておいた。

スポーツ・フィットネス

守備位置・担当位置

position

チーム競技で、選手ごとに決められた定位置と、そこで担う役割。野球ならピッチャー、キャッチャー、内野手、外野手など、サッカーならゴールキーパー、ディフェンダー、フォワードなどに分かれ、ポジションごとに求められる技術が違う。選手は「どこを守るか」を指す言葉として使う。

彼は中学まで内野だったが、高校からポジションを外野に変えた。

人事・人材

募集職種・職位

position

採用の場面で、会社が埋めたい席を、担う仕事と求める役割で具体的に表したもの。「ポジションが空いた」「このポジションで募集する」のように採用の単位として扱い、一つのポジションを複数の求人媒体で募ることも、複数のポジションを一つの求人でまとめて募ることもある。社内の職位や担当を指して使うこともある。

このポジションは、既存メンバーの退職に伴う欠員補充での募集です。

音楽(演奏・楽器)

押弦位置・スライド位置

position

弦楽器の指板上の、弦を押さえる位置。また、トロンボーンで、U字管をスライドさせる場合の各種の位置。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)/コトバンク

弦楽器では、左手が指板上のどのあたりを押さえるかを表す。開放弦のすぐ次の音を第1指で押さえる位置が第1ポジションで、そこから高い側へ第2、第3…と数え、高い位置は「ハイポジション」と呼ぶ。位置を移ることは「ポジション移動(シフティング)」と言う。トロンボーンでは、スライドを伸ばす度合いを第1〜第7ポジションで表し、隣り合うポジションは半音の関係にある。

この小節は第1ポジションのままだと届かないので、第3ポジションに移動して弾く。

「置く」から出た語が、持つ・守る・埋めるに分かれた

ポジション(position)の元はラテン語の positio で、さらにさかのぼると「置く」を意味する動詞 ponere に行き着く。語源辞典 Online Etymology Dictionary によれば、英語で「ある人や物が占める場所」の意味が見えるのは1540年代、「職、地位」の意味は1890年とされている。原義は「置かれた状態」で、そこから場所や役目へ広がった。

その「置かれた状態」は、日本語では業界ごとに別の動詞で語られる。金融なら「持つ」、スポーツなら「守る」、採用なら「埋める」である。

持つ、守る、埋める

金融では、売買したあとまだ決済していない保有量を指す。訳語は「持ち高」だ。買い持ちが多ければロング、売り持ちが多ければショート、釣り合っていればスクエアと呼ぶ。「ポジションをスクエアに戻す」とは、偏りを解消して損益がどちらにも振れない状態にすることをいう。

スポーツでは、チーム競技で選手に割り当てられた定位置と役割を指す。訳語は「守備位置」である。野球のスコアブックでは、投手を1、捕手を2、一塁手を3と続け、右翼手の9までを数字で表す。遊撃手が捕って一塁手が受けたゴロは「6-3」と書く。ここでは位置そのものが、記録の言葉になっている。

採用では、会社が埋めたい席を、仕事と求める役割で具体的に表したものを指す。「ポジションが空いた」「このポジションで募集する」と言い、動詞は「空く」「埋める」になる。人ではなく席のほうを主語にして語る点が、ほかの二つと違う。

並べると、金融のポジションは自分が抱えているもの、スポーツは自分が立つ場所、採用はまだ誰もいない場所である。金融では持ち主がいて、数量が変わり、決済すれば消える。スポーツでは選手が代わっても位置は残る。採用では、人が辞めて席が空いたときに初めて、ポジションが話題になる。

日本語の「ポジション」は一語で三つをまかなうが、置き換えの訳語は「持ち高」「守備位置」「募集職種」とまったく重ならない。野球をしていた人が金融の現場で「ポジションを減らせ」と言われても、守備位置を減らせとは受け取らないだろう。一方、採用担当の「ポジションが二つ空いている」を金融の人が聞けば、一瞬、持ち高の話かと戸惑うかもしれない(これは推測)。