略語

PR

ピーアール

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

広報・PR

広報・パブリックリレーションズ

Public Relations

組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。

出典:日本広報学会による定義(2023年6月)/公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会『パブリックリレーションズとは』

組織がステークホルダー(顧客・株主・地域社会など利害関係者)と信頼関係を築くための活動全般。プレスリリースの配信や取材対応、危機時の発信などを含む。日本では「宣伝」の意味で使われがちだが、業界では一方的な宣伝ではなく双方向のコミュニケーションを指す。

新製品の発表にあわせて、広報担当がPR用のプレスリリースを配信した。

IT・システム開発

プルリクエスト

Pull Request

Gitのリポジトリ(ソースコードの保管場所)で、作業用ブランチに加えた変更を本流へ取り込むようレビュー担当者に依頼する仕組み。GitHubやBitbucketで使われ、承認されるとマージ(統合)される。GitLabでは同じ仕組みをマージリクエスト(MR)と呼ぶ。

修正が終わったのでPRを出しました。レビューをお願いします。

スポーツ・フィットネス

自己記録(筋力トレーニング・ランニングなど)

Personal Record

ある種目でその人が過去に出した最高の記録。ウエイトトレーニングの最大挙上重量や、5kmやマラソンなど特定距離の最速タイムなどを指す。Personal Best(PB)とほぼ同じ意味で使われ、ジムやトレーニングの場で「PRを更新する」のように言う。

今日のスクワットで100kgを挙げて、PRを更新した。

半導体・電子部品

フォトレジスト

Photoresist

半導体製造のフォトリソグラフィ(光で回路パターンを基板に焼き付ける工程)で使う感光性材料。特定の波長の光を当てると性質が変わり、基板表面に狙ったパターンを作る。市場調査資料などで略称として使われる。

EUV向けのPRの需要が伸びている。

医療・医学

PR間隔(心電図)

PR interval

心電図上で、P波の始まりからQRS波の始まりまでの時間。心房が興奮し始めてから心室が興奮し始めるまでの房室伝導(電気信号が心房から房室結節を通って心室へ伝わること)の所要時間を表す。成人の正常は0.12〜0.20秒で、延長すると房室ブロックを疑い、短縮するとWPW症候群などの早期興奮が疑われる。日本ではPQ時間とも呼ぶ。

この心電図はPR間隔が0.24秒に延びていて、1度房室ブロックの所見です。

インターネット広告

ページランク

PageRank

Googleが開発した、被リンクの数と質からウェブページの重要度を評価するアルゴリズム。SEOの分野ではPRと略し、かつてGoogleツールバーに0〜10の数値で表示されていたことから「PR4のサイト」のようにサイトの評価を表す言い方が広まった。ツールバーでの表示は2016年に終了した。

昔はPRの高いサイトからの被リンクを集めるのがSEOの定番だった。

訳語が見つからないまま入ってきたPR

「PR」という2文字は、広報の担当者なら Public Relations、開発者なら Pull Request、ジムに通う人なら Personal Record、半導体材料の市場資料を読む人なら Photoresist を指す。少なくとも四つの展開がある略語である。このうち日本に最初に根づいた Public Relations は、入ってきた経緯が少し変わっている。

命令として届いた言葉

第二次世界大戦後、日本へのPR導入はGHQの指導のもとで進んだとされる。民間情報教育局(CIE)は1947年の春から、各地の軍政部を通じて、行政機関に広報部門(Public Relations Office)を置くよう求めた。都道府県にも設置が求められ、CIEはPRの理論と実践を教える講習会も開いている。

このとき public relations にふさわしい日本語訳が見つからなかった。先行研究では、そのことがのちの受け取り方のずれにつながった可能性が指摘されている。ただし、どの訳語がいつ定着したかまでは、今回確認できた資料の範囲では言えない。

定義と日常語のずれ

現在の定義は、日本広報学会が2023年6月に示したものである。PRを「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能」とする(日本パブリックリレーションズ協会『パブリックリレーションズとは』より)。要点は「双方向」と「経営機能」で、広告のような一方向の宣伝とは区別されている。

ところが日常では、「PRする」が「宣伝する」の意味で通ってしまう。「自己PR」や「PR動画」の使い方がそうだ。

GitHubの画面で「PRを出す」と言えば、変更を取り込んでもらうための依頼を指す。ジムで「PRを更新した」と言えば、自己最高記録のことになる。この二つは英語の略語として、そのまま現場に入った。何の略かを訳す必要があったのは、広報だけである。

1947年の講習会の資料にPRという略語が使われていたかどうかは、確認できていない。