QC
キューシー
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
品質管理
Quality Control
科学的に製品の品質を管理する方法。管理図法や層化法などの統計的手法を使う。現場の従業員が小集団で品質管理活動に取り組む「QCサークル」のように、活動の呼び名にも使われる。
ロット間で寸法がばらつくので、QCで管理図を取り直して工程を見直した。
品質管理(試験検査部門)
Quality Control
医薬品の製造所で、原料・資材・製品の試験検査を担う組織。GMP省令に基づく品質部門は、品質保証に係る業務を担当する組織と、試験検査に係る業務を担当する組織を置く必要があり、後者の役割をQCと呼ぶ。QAが品質の仕組みを築いて保ち、QCが試験で確かめる、という分担になる。
出荷判定の前にQCで規格試験の結果をそろえ、QAが逸脱の有無を確認する。
精度管理
Quality Control
臨床検査室で、測定結果の精度(精密性と正確性)を保つための管理。施設が自ら精度を管理する内部精度管理と、日本医師会や日本臨床衛生検査技師会などが実施する外部精度管理がある。外部精度管理の一つの設計では、多数の施設に同一の試料を配り、各施設の報告値が平均からどれだけ隔たっているかを調べる。管理が外れた回は、結果を報告せずに棄却する。
今朝の生化学検査は、QCが許容範囲を外れたため、結果を報告せずに原因を調べた。
アノテーションの品質チェック
Quality Control
AIの教師データを作る工程で、ラベル付け(アノテーション)の結果の品質を確かめる段階。全件を見る代わりに、統計的に必要な数だけ無作為に抜き取り、あらかじめ決めた品質基準に対して合否を出す方式がある。複数の作業者のラベルを突き合わせる方法や、モデルの確信度で振り分けて人が見直す方法も使われる。
ラベルの基準がぶれていたので、QCで抜き取り分を見直してから検収に回した。
納品前の技術チェック
Quality Control
完成した映像ファイルを、納品先へ渡す前に技術面から確かめる工程。映像と音声のレベル、ドロップアウト、長く続く黒画面や無音、字幕の有無と正しさ、ファイル形式が納品要件を満たすかを見る。ファイルベースの自動検査ツールで調べたうえで、専門の担当者が映像と音声を最終確認することが多い。要件を満たさないと、受け取りを拒まれたり罰金を科されたりすることがある。
納品仕様に合わせて音声レベルを直し、QCを通してから配信先に送った。
工場の管理図が検査室に移ったとき
臨床検査室で管理試料の測定結果が管理の範囲を外れると、その回の結果は報告されない。疑われているのは患者の検体ではなく、測定のほうだ。検査室ではこれをQCと呼び、日本語では「精度管理」と訳す。工場の「品質管理」と同じ Quality Control なのに、なぜ訳語が分かれたのか。
検査室が出荷するのは、測定値である。その値が信用できるかどうかは、同じ試料を繰り返し測って結果がそろうか(精密性)、本当の値に近いか(正確性)で決まる。施設が自前で精度を見張る内部精度管理は、そのためにある。検査室にとっての品質は、ほぼ精度のことになる。訳語が分かれた理由の半分はこれだと思う。
もう半分は、道具の出どころにある。ベル研究所の統計家ウォルター・シューハートは、1931年の著書 Economic Control of Quality of Manufactured Product で、統計的品質管理の理論と実務を示した。工場の品質管理に統計を持ち込んだ人である。
これを検査室に持ち込んだのが、病理医のレビー(Levey)とジェニングス(Jennings)で、1950年のことだった。二人は患者の検体を二重に測る方法を提案した。患者ごとに濃度が違うので、これは難しいやり方だった。
ところが、いま「レビー・ジェニングス管理図」と呼ばれる図は、二人の方法そのものではない。1952年にヘンリー(Henry)とセガロヴ(Segalove)が、患者の検体を混ぜて長くもつ管理試料にすることを勧め、二重測定でなく一回ずつの測定値をそのまま打つ形に変えた。いまの単一値の管理図は、こちらの形である(検査室の品質管理を扱う Westgard QC のサイトによる)。名前は先に持ち込んだ二人のもので、中身は後の二人の改良という、少しずれた命名になっている。
医薬品の製造所では、QCはさらに狭くなる。GMP省令に基づく品質部門は、仕組みをつくって承認する品質保証(QA)と、原料・資材・製品の試験検査をする組織に分かれ、後者をQCと呼ぶ。出荷の前にQCが規格試験の結果をそろえ、QAが逸脱がないかを確かめる。製造業ではQCは管理活動の全体を指し、医薬品では組織の片方、検査室では測定の精度を保つ作業を指す。
もう一度、検査室の朝に戻る。範囲を外れた点は、工場の品質管理から持ち込まれた図の上にある。止まるのは患者の検体ではなく、測定のほうだ。