リグ
リグ
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
掘削リグ
drilling rig
「リグ」とは、石油や天然ガスの探査・生産のための掘削装置のことで、作業に必要な労働者や機械類を収容することが出来ます。
石油・天然ガスの探鉱や生産のために地層へ穴を掘る設備の総称。海上ではジャッキアップ型(脚を海底に立てて船体を持ち上げる)、セミサブ型(半分沈めた浮体)、ドリルシップ型(船に掘削機器を載せたもの)に分かれる。稼働しているリグの数は、原油開発の勢いを測る指標としても見られる。
水深が深い海域なので、ジャッキアップ型ではなくセミサブ型のリグを手配する。
リグ(釣りの仕掛け)
rig
ルアー釣り、とくにバスフィッシングでワームと針、オモリ(シンカー)をどう組み合わせて結ぶかという仕掛けの形。ダウンショットリグ、ジグヘッドリグ、ノーシンカーリグなどがあり、リグが変わるとワームの沈み方や動きが変わるため、状況に合わせて使い分ける。
魚が表層に浮いているので、オモリを付けないノーシンカーリグに替えた。
リグ(CGキャラクターの骨組み)
rig
3DCGや2Dアニメーションで、モデルを動かすためにボーン(骨)と関節、操作用のコントローラーを組み込んだ仕組み。この設定を作る作業がリギングで、アニメーターはコントローラーを動かしてポーズや動きを付ける。
モデリングが終わったので、リグを組んでからアニメーターに渡す。
リグ(ウィンドサーフィン:セイル部一式)
rig
ウィンドサーフィンで、ボードに取り付けて風を受ける側のセイル、マスト、ブーム、マストエクステンション(マストを延長する部品)をまとめた呼び名。ボードとは別に扱い、風の強さに合わせて大きさの違うセイルのリグに替える。
風が上がってきたので、リグを小さいセイルのものに替えて沖へ出た。
リグは、船を仕立てる動詞から来た
海上の掘削現場でリグといえば、海底に脚を立てる巨大な設備のことだ。バス釣りの人がリグを替えるといえば、オモリを外して針とワームだけにするような、手のひらの話になる。CGのアニメーターがリグを組むのは、モデルの中にボーンと操作用のコントローラーを仕込むことだ。ウィンドサーフィンの人が「風が上がってきたからリグを替える」と言えば、ボードに立てるセイルとマストの一式を、小さいものに取り替えることになる。
大きさも素材もまるで違う。それでも同じ「リグ」で通じるのは、なぜだろうか。
手がかりは英語の動詞 rig にある。語源辞典の Etymonline によれば、rig は15世紀後半、1480年ごろに船の艤装を表す語として英語に現れた。マスト、帆桁、帆、それを支えて操るロープ網を取り付けて、船を出航できる状態にすることだ。語源はデンマーク語・ノルウェー語の rigge(装備する)やスウェーデン語の rigga あたりと考えられていて、さらにさかのぼれば「縛る」という印欧語の語根に行き着くかもしれない、と同じ辞典は書いている。縛るかどうかは確定ではない。ただ、釣り糸を結んで仕掛けを作る話を知っていると、つい頷きたくなる。
名詞の rig が「船のマストや帆の配置」を指すようになったのは1822年とされる。そこから馬車(1831年)、トラックやバス(1851年)へ広がり、井戸を掘る装置を指す用例が1875年に出てくる。順番だけ見ると、帆船の用語が陸に上がり、乗り物になり、最後に掘削の道具になった。
掘削リグの種類を見直すと、少し可笑しいことに気づく。ジャッキアップ型は脚を海底に立てて船体を持ち上げる。セミサブ型は半分沈めた浮体。ドリルシップ型は、船に掘削機器を載せたものだ。海の上では、リグはもう一度、船の語に戻っている。
ウィンドサーフィンのリグは、もっと素直に帆の側へ戻った例だ。ボードとは別に扱う、セイル、マスト、ブーム、マストを延ばすエクステンションの一式で、風の強さに合わせて大きさの違うセイルのものに替える。1822年の「マストや帆の配置」という意味に、いちばん近い使われ方に見える。
釣りとCGとウィンドサーフィンはどうか。こちらの入った時期は、確認できる資料を見つけていない。帆船の rig がそのまま持ち込まれたのか、掘削や機械の rig を経たのかも、わからない。確かめられたのは、四つの意味がどれも「部品を組み合わせて、使える状態にしたもの」という点で重なっていることだ。ダウンショットリグは針、ワーム、シンカーの結び方で、ワームの沈み方が変わる。CGのリグは骨と関節とコントローラーで、アニメーターが動かせるかどうかが決まる。ウィンドサーフィンのリグは、セイルとマストとブームを組んで、風を受けて走れる状態にしたものだ。掘削リグは、作業に必要な労働者や機械類を収容する装置である。素材ではなく、完成品でもない。組み上がって、これから使われる途中の姿を指している。
この共通点が語源から直接続いているのか、別々の現場で似た発想が生まれたのか、私には決め手がない。
ただ、釣り具店の棚で「ノーシンカーリグ」を探す人は、針とワームの二つだけを手に取る。その二つを結ぶ作業に、帆とロープで船を仕立てた動詞の名残がある、と考えたくはなる。