ロッド
ロッド
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
釣り竿
fishing rod
釣りで使う、手元から穂先へ細くなる棒状の釣具。ルアー釣りや海釣りの竿は、糸を通すリング状のガイドとリールを固定するリールシートを備える。収納の仕方で、入れ子状に縮める「振出」と、何本かをつないで1本にする「並継」に分かれる。
このロッドは二本継ぎなので、車に積んで渓流まで持ち運びやすい。
脊椎ロッド(脊椎固定用の縦棒)
spinal rod
脊椎固定術のインプラントで、椎骨に入れたスクリューやフックを縦につなぎ、脊椎の動きを止めて安定させる棒。チタン合金やステンレスでできており、まっすぐなものと、前弯・後弯に合わせて曲げたものがある。脊椎の不安定性や変形の治療、固定術の補助に使う。
術前計画に合わせて、湾曲させたロッドをスクリューのヘッドに通して固定した。
ロッド(地盤調査・ボーリングの鋼棒)
rod
地盤調査やボーリングで、先端の工具を地中へ送り込む鋼製の棒。スクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験、JIS A 1221)では、径19mmのロッドを継ぎ足しながら先端のスクリューポイントを貫入させ、25cmごとの半回転数から地盤の硬さを調べる。
ロッドを一本ずつ継ぎ足しながら、25cmごとの半回転数を記録した。
パーマロッド(毛巻き用の棒)
perm rod
パーマ施術で髪を1束ずつ巻きつける円筒状の道具。巻いた毛束に薬剤をつけてウェーブやカールの形を決める。太さ(直径)で仕上がりが変わり、太いものは大きくゆるいウェーブ、細いものは細かいカールになる。コールドパーマ用には薬液が通る孔をあけた形もある。
毛先から根元まで32mmのロッドで平巻きにして、ゆるめのウェーブを出した。
継ぐロッド、曲げるロッド
二本継ぎの釣りロッドを車に積むと、荷室の端に収まる。継ぎ目をはずせば、一本の長い棒が二本の短い棒になるからだ。持ち運ぶために棒を割る。ロッドの話はそこから始まる、と思っていた。
ところが地盤調査の現場にも、同じように継ぐロッドがある。スクリューウエイト貫入試験(2020年のJIS A 1221改正まではスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれた)では、径19mmの鋼のロッドを一本ずつ継ぎ足しながら、先端のスクリューポイントを地中へ送り込む。こちらは持ち運びのためではない。深く入れるために、棒を足していく。
釣りのほうの継ぎ方にも二種類ある。入れ子状に縮める「振出」と、何本かをつないで一本にする「並継」だ。二本継ぎは並継にあたる。縮める棒と、つなぐ棒。地盤調査のロッドは、つなぐほうの仲間である。
では、ロッドはどの業界でも継ぐものなのか。
そうではなかった。脊椎固定術のロッドは継がない。椎骨に入れたスクリューやフックを縦につなぎ、脊椎の動きを止める棒で、チタン合金やステンレスでできている。まっすぐなものもあるが、前弯・後弯に合わせて曲げたものもある。
美容室のロッドも継がない。パーマで髪を一束ずつ巻きつける円筒状の道具で、巻いた毛束に薬剤をつけてウェーブやカールの形を決める。コールドパーマ用には、薬液が通る孔をあけたものもある。この棒は一本ずつがそのまま使われ、変わるのは太さだ。太いものは大きくゆるいウェーブに、細いものは細かいカールになる。曲がるのは棒ではなく、棒に巻かれた髪のほうである。
釣りと地盤調査では、棒の長さが使い方に合わせて変わる。脊椎では、長さではなく形が体に合わせて変わる。パーマでは、太さが仕上がりに合わせて選ばれる。同じ「棒」でも、現場が棒に求めるものはこれだけ違う。
地盤調査のほうは、棒の形そのものは仕事の中身ではない。25cm貫入させるのに何回半回転したか、その数が地盤の硬さを教える。ロッドは先端の工具を送り込む通り道で、継ぐ作業はただ深さを稼ぐ手段だ。釣りのロッドは逆で、細くなっていく棒の形そのものが道具の性格になる。パーマのロッドもこちら側で、32mmか、もっと細いかという直径の選択が、そのまま髪の仕上がりになる。
釣りは割って運び、地盤調査は足して沈め、脊椎は曲げて留め、美容は巻いて形をつける。棒という形だけが共通で、その棒に何をさせるかは業界ごとにまったく違う。
車の荷室に戻れば、二本継ぎの釣りロッドの継ぎ目と、地盤調査のロッドの継ぎ目は、つなぐ仕組みとしては同じ種類のものだ。ただ、片方は川まで歩くために割り、片方は一段でも深く入れるために足している。継ぎ目をはさんで、向きが逆なのである。