RT
アールティー
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
放射線治療・診療放射線技師
radiotherapy / radiological technologist
医療では、放射線治療(radiotherapy)をRTと略す。同じ略号が職種にも使われ、医師・歯科医師の指示のもとで放射線の照射(撮影を含む)を行う診療放射線技師の略称もRTである。治療の話か職種の話かは文脈で見分ける。英語圏では呼吸療法士(respiratory therapist)もRTと略すが、日本の「3学会合同呼吸療法認定士」は学会合同の認定委員会が認定する制度で、診療放射線技師とは別である。
この患者さんは術後にRTを予定していて、今日はRTの方と照射計画の打ち合わせがあります。
保持時間
retention time
クロマトグラフィーで成分ごとに測られる保持時間(retention time)。標準試料と未知のピークの保持時間を比べることが、成分を同定する手がかりになる。カラムの交換などでずれるため、GCには保持時間を合わせ直すRetention Time Lockingという機能もある。
標準品とRTが0.02分しかずれていないので、このピークは目的成分とみてよさそうだ。
逆転写・室温
reverse transcription / room temperature
分子生物学では、RNAからcDNA(相補的DNA)を作る逆転写(その酵素は逆転写酵素)をRTと略し、RT-PCRの前半の工程を指す。一方、実験プロトコルの温度欄ではRTは室温(room temperature)を意味し、同じ書面に両方が出ることもある。逆転写は酵素や反応の話、室温は温度条件の話なので、前後の語で区別する。
RTは42℃で60分、そのあとの抗体反応は室温(RT)で1時間行う。
リツイート
retweet
旧Twitter(現X)で他人の投稿を自分のフォロワーに広める操作、またその印として投稿の頭に付ける記号。公式機能の登場前は、ユーザーが元の投稿の前に「RT」を手入力して引用していた(非公式RT)。Xでは公式機能の呼称が「リポスト」に変わったが、「RTお願いします」のような言い方は今も残っている。
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ボタンより先にあった二文字、RT
Xの画面に「RT」と書かれたボタンはもうない。公式の呼び名は「リポスト」に変わった。それなのに、「RTお願いします」と書く人は今もいる。ボタンの名前が変わっても二文字が残るのは、なぜか。
二文字のほうが先にあったからだ。Twitterが公式のリツイート機能を一部のアカウントから出し始めたのは2009年11月で、それ以前は、ユーザーが他人の投稿の頭に「RT @ユーザー名」と打ち込んで貼り直していた。投稿は140字までだったから、この前置きは本文を削る。公式機能が出たあと、手で打つやり方は「非公式RT」と呼ばれるようになる。仕組みは置き換わったが、記号は運営が用意した名前より前に、使う側が作っていた。
同じ二文字を、病院の人は別の意味で使う。放射線治療もRT、その照射を行う診療放射線技師もRTだ。「この患者さんは術後にRTを予定していて、今日はRTの方と照射計画の打ち合わせがあります」という一文は、治療と人の両方を指していて、どちらも通じる。
分析の現場では、RTは保持時間(retention time)である。クロマトグラフィーで成分ごとに測られる値で、標準試料と未知のピークの保持時間を比べて、成分を同定する手がかりにする。
いちばん紛らわしいのは、分子生物学の実験プロトコルだろう。RNAからcDNAを作る逆転写(reverse transcription)もRT、温度欄の室温(room temperature)もRT。「RTは42℃で60分、そのあとの抗体反応は室温(RT)で1時間」のように、同じ行に二つの意味が出てくる。それでも取り違えにくいのは、一つめのRTには42℃という数字が付き、二つめは「室温(RT)」と温度の条件として書かれているからだ。
頭文字がR・Tになる語は、ここだけで放射線治療、診療放射線技師、保持時間、逆転写、室温、リツイートの六つある。どれも、たまたま同じ二文字に行き着いただけで、由来はつながらない。ただ、リツイートだけは経緯が違う。機能の呼び名として決められる前に、ユーザーが投稿のたびに頭へ打ち込んでいた。実験ノートの「RT」は前後の語で意味が決まるが、Xの「RT」は、打ち込む習慣のほうが先に名前になった。