ランナー
ランナー
6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
プラモデルの部品枠
sprue / runner (plastic model kit)
プラモデルのキットで、複数のパーツをつないで枠のように並べている部分。パーツはゲート(ランナーとパーツをつなぐ細い部分)でつながっていて、ニッパーで切り離してから組み立てる。手でちぎるとゲート跡がえぐれたりバリが残ったりするため、きれいに仕上げたい人は切り方に気を使う。
ランナーからパーツを切り出すときは、ゲートを少し長めに残してから処理すると跡がきれいになる。
ランナー(射出成形の樹脂流路)
runner (injection molding)
射出成形の金型で、成形機から射出された樹脂がスプルー(最初の入り口)を通ったあと、製品部分の入り口であるゲートまで流れていく通路。断面は樹脂の流れ抵抗が小さい円形が理想的で、加工しやすい台形もよく使われる。製品にならない部分なので、できるだけ短くなるよう設計する。
樹脂のロスを減らすため、ランナーを最短距離になるよう金型を設計し直した。
ランナー(軽量鉄骨下地の溝形鋼)
runner (light-gauge steel framing)
軽量鉄骨(軽天・LGS)で壁や間仕切りの下地を組むとき、床と天井側に取り付けるコの字断面の鋼材。縦材のスタッドをこのランナーにはめ込み、上からせっこうボードを張る。ランナーは壁の位置を決める基準になる部材。
墨出しに合わせて上下にランナーを固定してから、スタッドを建て込んでいく。
ランナー(CI/CDのジョブ実行環境)
runner (CI/CD)
ランナーは、 GitHub Actions ワークフローでジョブを実行するマシンです。
CI/CD(コードの変更ごとに自動でテストやビルドを回す仕組み)で、ワークフローのジョブを実際に実行するマシンや仮想環境。GitHub Actions や GitLab CI/CD で使われる用語で、サービス提供側が用意するホステッド型と、自社で用意して管理するセルフホステッド型がある。
ビルドが遅いので、セルフホステッドランナーのスペックを上げた。
ランナー(野球:走者)
runner (baseball)
野球で、打者がフェアボールを打つか四死球などで一塁に向かうと走者となり、塁上にいる攻撃側の選手を指す。一塁から順に進塁し、本塁に触れると1点になる。一塁に達するまでの打者は打者走者と呼んで区別することがある。
ランナーが二塁にいるので、シングルヒットでも一点が入る場面だ。
ランナ(水車の羽根車)
runner (hydraulic turbine)
水力発電所の水車で、水の圧力や流れを受けて回転する羽根車の部分。回転は主軸を通して発電機に伝わり、電気を生む。水車の心臓部とされ、フランシス水車・カプラン水車・ペルトン水車など型式ごとに形が異なる。現場では「ランナ」と長音を付けない表記も多い。
定期点検で水車を分解し、ランナの摩耗とキャビテーション(水中の気泡の破裂による侵食)の痕を確認した。
プラモの枠は、金型の中の道だった
ニッパーでパーツを切り離したあと、手元に残る枠はたいてい捨てる。この枠をプラモデルの世界ではランナーと呼ぶ。
射出成形の現場にも、ランナーという語がある。成形機から射出された樹脂が、スプルーと呼ばれる入り口を通り、製品部分の入り口であるゲートまで流れていく通路のことだ。MONOist の金型設計の連載では、これを製品にならない部分とし、できるだけ短く設計するものとして扱っている。
同じ綴りの別の語が、偶然ホビーと工場に流れ着いたのだろう。最初はそう思った。ところが同じ連載に、プラモデルの枠がこのランナーにあたる、という説明がある。別の語ではなかった。手の中の枠は、金型の内側にあった樹脂の通り道が、そのまま固まった形をしている。パーツと枠をつなぐ細い部分をゲートと呼ぶのも、工場の言葉と同じだ。
そう並べてみると、ずれが目につく。工場では、ランナーは減らしたい部分である。樹脂のロスになるので、金型を設計し直してでも短くする。プラモデルでは同じ部分が箱に入って売られ、買った人が自分の手でゲートを切る。ゲートを少し長めに残してから処理すると跡がきれいになる、というのが組み立てる側の知恵だ。金型の設計者が削りたがる部分と、組み立てる人は毎回向き合っている。
ほかの業界の「ランナー」は、この系統とは別に見える。
CI/CD の世界では、ランナーはジョブを走らせる場所だ。GitHub Docs には、「ランナーは、 GitHub Actions ワークフローでジョブを実行するマシンです。」とある。自社で用意するセルフホステッド型と、提供側が用意するホステッド型がある。野球では、塁上にいる攻撃側の選手、つまり走者がランナーだ。軽量鉄骨の下地工事では、床と天井に固定するコの字断面の鋼材を指す。縦材のスタッドをはめ込むので、壁の位置を決める基準になる。
水力発電所には、水車の羽根車をランナと呼ぶ現場がある。水の圧力や流れを受けて回り、その回転が主軸を通して発電機に伝わる。水車の心臓部とされ、フランシス水車、カプラン水車、ペルトン水車と型式ごとに形が違う。現場では長音を付けず「ランナ」と書く表記も多い。点検で水車を分解すれば、キャビテーション、つまり水中の気泡の破裂による侵食の痕を、この羽根車で確かめることになる。
樹脂が走る道、走者、ジョブを走らせる場所、スタッドを受ける溝、水を受けて回る羽根車。五つとも runner という英語から来た語だろうとは思う。ただ、野球と軽天と水車のランナ(ー)がどういう経路で日本語に入ったのかは、今回確かめられていない。
確かめられたのは、プラモデルの枠と金型の流路が同じものだということだ。次に枠からパーツを切り離すとき、ニッパーを入れるゲートの向こうには、樹脂が流れた道の形が残っている。