用語

スコア

スコア

8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

音楽(演奏・楽器)

総譜

score

合奏・合唱の全パートを一つの紙面に縦に並べた楽譜。各声部の進行や全体の和声が見渡せるため指揮者が用い、奏者は自分の声部だけを記したパート譜を見る。オーケストラでは通常、上から木管、金管、打楽器、鍵盤楽器、弦の順に段を重ね、合唱ではソプラノ、アルト、テノール、バスの順に置く。持ち運び用に縮小したものはポケット・スコアと呼ぶ。

本番前に指揮者がスコアに書き込んだ変更を、各パート譜へ写して配った。

映画・映像・アニメ

劇伴(映画音楽)

film score

映画やドラマの映像に合わせて作曲され、劇中で流される音楽。英語圏では original score、映画では film score と呼ばれ、日本の現場の「劇伴」にあたる。サウンドトラックは本来フィルム上の音声の帯を指す技術用語で、転じて劇伴を収めたレコードやアルバムの呼び名になった。

この作品のスコアは全編を一人の作曲家が書き下ろした。

銀行・融資

信用スコア

credit score

融資や与信の審査で、申込者の属性・融資条件・支払い実績や契約状況などから返済の見込みを点数にしたもの。想定延滞率を算定して格付けするスコアリング方式で融資の可否を決め、担当者の経験や勘による審査に比べて時間がかからず、判断のばらつきも抑えられる。住宅ローンや中小企業向けの小口融資で使われる。

少額の無担保融資は、スコアが基準を超えれば短時間で承認される。

マーケティング・CRM

リードスコア(見込み客の点数)

lead score

見込み客(リード)の購買意欲や受注確度を点数化したもの。業種・役職・従業員数などの属性スコアと、資料ダウンロード・料金ページ閲覧・メール開封などの行動スコアを足し合わせる。一定の点数を超えた客を営業に引き渡し、優先して対応する基準にする。

料金ページを見た客に加点し、50点を超えたら営業へ渡すルールにした。

インフラ・クラウド・セキュリティ

CVSS基本値(脆弱性の深刻度)

CVSS base score

共通脆弱性評価システム(CVSS)で、ソフトウェアの脆弱性の深刻度を0〜10.0の数値で表したもの。ベンダーによらず同じ基準で比べられる。IPAの区分では9.0以上が緊急、7.0〜8.9が重要、4.0〜6.9が警告、0.1〜3.9が注意で、パッチ適用の優先順位づけに使う。

CVSSスコアが9.8の脆弱性なので、今夜中にパッチを当てる。

スポーツ・フィットネス

スコア(ゴルフ:打数)

score

ゴルフでは得点ではなく、ラウンドで打ったストロークの合計を指し、少ないほど良い。全ホールの実際の打数の合計をグロススコア、ここから各人のハンディキャップを引いたものをネットスコアと呼ぶ。腕前の違う参加者が集まるコンペでは、ネットスコアで順位を決めるのが一般的。

今日のグロススコアは92で、ハンディを引いたネットは74だった。

医療・医学

臨床スコア(病状評価の点数)

clinical score

患者の状態を複数の観察項目に点を割り振って合計し、重症度や緊急度を誰が測っても同じ尺度で判断するための数値。新生児のアプガースコアは皮膚の色・心拍数・反射・筋緊張・呼吸の5項目で10点満点、通常は生後1分と5分に評価する。意識障害を見るグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)は開眼・言語・運動の3項目で3〜15点となり、点数が低いほど重症。

搬送時のGCSは8点で、重度の意識障害として脳外科に連絡した。

AI・データ

予測スコア(モデルの出力値)

prediction score

機械学習モデルが個々のデータに対して出す数値で、ある結果が起きる確率や確からしさを表す。多くは0〜1の値で、あらかじめ決めたしきい値(カットオフ)を超えるかどうかで「はい/いいえ」などの判定に変換する。しきい値を動かすと、判定の厳しさと見逃し・誤検知の割合が変わる。

不正利用の予測スコアが0.8を超えた取引だけを、人の確認に回す。

スコアは棒に刻んだ切り込みだった

総譜、ゴルフの打数、信用スコア、見込み客の点数、脆弱性の深刻度。五つの業界でまったく違う対象を指すのに、どれも英語では score と呼ばれる。偶然の同音異義だろう、と思いたくなる。ところが語源をさかのぼると、五つは一本の棒に行き着く。

語源辞典 Etymonline によれば、score は古英語の scoru(20)に由来し、その元は古ノルド語の skor で、「印、刻み目、切り込み」を意味した。さらに遡るとインド・ヨーロッパ祖語の「切る」という語根に届き、同じ語根からは shear(刈る)や short も出ている。同サイトは、20ごとに棒へ大きな刻みを入れて数を数えた習慣が、20という意味につながったと推測している。つまり score はもともと数えるために刻むことで、数えた結果としての「点数」は後から付いた意味になる。

打数に残った原義

この原義にいちばん近いのがゴルフだ。ホールごとに打った回数を書き留め、その合計をスコアと呼ぶ。点を取る競技の得点とは向きが逆で、少ないほどよい。ゴルフじゃらんの説明では、全ホールの実打数の合計がグロススコア、そこからハンディを引いたものがネットスコアである。刻み目を数えた記録、という元の姿がそのまま残っている。

総譜については、各パートの段を縦の小節線でまとめて貫く書き方から score と呼ばれるようになった、という説明をよく目にする。刻み目の原義と結びつく説明だが、今回の調べでは一次資料で確かめられなかった。通説として紹介するにとどめる。

数える対象が人に移る

信用スコアでは、数える対象が自分の打数から他人の返済の見込みに変わる。米国では Fair, Isaac and Company(現 FICO)が1956年に創業し、銀行のデータにもとづく最初の FICO スコアが1989年に Equifax 経由で使えるようになったと、同社や各種解説は伝えている。融資担当者の経験や勘の代わりに数字で判断する流れの中で、score という語が金融の現場に定着した。

マーケティングのリードスコアと IT の CVSS は、さらに新しい。どちらも、見るべき相手に優先順位を付けるための数字である。リードは50点を超えたら営業に渡し、CVSS は9.0以上なら緊急として扱う。点が高いほど先に対応するので、数字がそのまま次の行動を決める。

同じ刻み目から出発して、少ないほどよいという向きを守っているのは、この五つのうちゴルフだけだ。ホールごとの打数を書き留める記録として、棒の刻み目は今もゴルフの紙の上に残っている。