略語

SD

エスディー

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

趣味・ホビー・玩具

SDガンダム(スーパーデフォルメ)

Super Deformed

キャラクターや機体を2頭身前後にデフォルメ(形を崩して愛らしく描くこと)した表現のこと。模型・玩具の世界では、バンダイが1985年にカプセル玩具「ガシャポン戦士 SDガンダムワールド」で始め、1987年にはプラモデルの「BB戦士」へ広がった。英語版Wikipediaは Superior Defender の略とする説も併記する。

ガンプラの棚にSD系のキットが並んでいて、組みやすいから子どもへの贈り物にしている。

半導体・電子部品

SDメモリーカード

Secure Digital

切手大の小型メモリーカードの規格。2000年1月にパナソニック、SanDisk、東芝が設立した団体SD Associationが、規格の策定と普及を担う。容量や速度で SDHC・SDXC などに分かれ、デジタルカメラやスマートフォンなどの記録媒体として使われる。

このカメラはSDXC対応なので、大容量のSDカードを差せる。

放送(テレビ・ラジオ)

標準画質(SD画質)

Standard Definition

ハイビジョン(HD)と区別して呼ぶ、標準的な画質のテレビ放送・映像方式。従来のNTSC方式に相当し、日本では480i/480p(最大720×480画素)を指す。日本の地上デジタル放送では、ハイビジョンで放送しない場合、SDなら1つの局で最大3チャンネルまで放送できる。

この素材はSDで収録されているので、HD枠に入れるときはアップコンバートが要る。

学術・研究

標準偏差

standard deviation

データのばらつきの大きさを表す統計量。分散の正の平方根で、ふつうσで表す。値が小さいほどデータは平均の近くに集まり、0ならすべて同じ値になる。論文では平均値に「平均±SD」と添える形で書かれる。

結果は平均±SDで示し、群間の差を検定した。

生命科学・バイオ

SDラット

Sprague Dawley

実験用ラットの系統のひとつ。1925年にRobert Dawleyが作った群を起源とし、アルビノ(白色)で温和、繁殖力が高い非近交(遺伝的に均一にしていない)系統。毒性試験や循環器、神経科学など幅広い研究で使われ、動物実験でもっとも普及するラットのひとつとされる。

毒性試験にはSDラットを用い、雄雌各10匹ずつ投与群に割り付けた。

教育

スタッフ・ディベロップメント(職員研修)

Staff Development

大学が職員の資質を高めるために行う組織的な研修の取り組み。事務職員だけでなく、技術職員や教員も対象に含み、管理運営から教育・研究の支援まで幅広い知識と技能を扱う。2016年の大学設置基準の改正(2017年4月施行)で、研修の機会を設けることが大学に義務づけられた。教員の授業改善を目的とするFD(ファカルティ・ディベロップメント)と対で語られる。

来月の全学SDでは、新任の事務職員向けに大学の財務の基礎を説明する。

建設・建築

異形棒鋼(SD鉄筋)

Steel Deformed

鉄筋コンクリートに使う、表面に節やリブ(ふし状の突起)をつけた異形棒鋼の種類記号。JIS G 3112で定められ、SD295・SD345・SD390・SD490のように後ろの数字で降伏点(鋼材が変形し始める応力)の下限値をN/mm²単位で示す。構造図や配筋図では、使う鉄筋の材質をこの記号で書き分ける。

柱の主筋はSD390、帯筋はSD295で配筋図に指示してある。

SDラットの体重を平均±SDで書く

毒性試験の論文で、方法の欄に「SDラット」と書き、結果の欄に体重を「平均±SD」と書く。同じ二文字が、数行の間に別の意味で並ぶ。校正者は迷わない。論文の読者も迷わない。迷わないのはなぜだろう。

一つには、置き場所が違うからだと思う。SDラットは動物の系統名として方法の欄に書かれ、平均±SDは数値の後ろに付く。しかも七つのSDのうち、SDラットだけが毛色の違う語である。ほかの六つは、ふつうの英語の単語の頭文字だ。Super、Secure、Standardが二つ、Staff、Steel。SDラットのDは人名で、1925年にRobert Dawleyが作った群に由来する。ふつうの単語でできた六つの中に、一つだけ人の名前が混じっている。

その六つも、中身は名前ほど褒めていない。Super Deformedは、キャラクターを2頭身前後に崩した表現で、1985年にバンダイがカプセル玩具で始めた。Superの先にあるのは、崩れた形である。Deformedはもう一つのSDにも入っている。建設のSteel Deformedは、表面に節をつけた鉄筋、異形棒鋼のことだ。節はコンクリートとの付着に関わる部分で、JIS G 3112ではSD295、SD345、SD390、SD490のように、後ろの数字が降伏点の下限値(N/mm²)を表す。形を崩して愛らしくするSDと、形を変えて強さを受け持つSDが、同じDeformedの名で並んでいる。

Secure Digitalのほうは、記録した内容の不正コピーを防ぐ仕組み(CPRM)が、すべてのSDメモリーカードに義務づけられていた。それが2018年3月に任意になった(SD Association)。名前に「安全」を残したまま、安全の機能のほうが選べるものになったわけだ。

義務の向きが逆のSDもある。大学のStaff Developmentは、職員の資質を高める組織的な研修で、教員の授業改善を目的とするFDと対で語られる。2016年の大学設置基準の改正で、研修の機会を設けることが大学に義務づけられた(2017年4月施行、国立国会図書館 カレントアウェアネス・ポータル)。SDカードの安全機能が義務をはずれる一年足らず前に、大学のSDは義務に加わっている。

では、二つのStandardはどうか。同じ英語なのに、日本語では別の顔をしている。

標準画質のStandardは「ふつう」の意味である。ハイビジョン(HD)と区別するために使う呼び方で、日本では480i/480p、最大720×480画素を指す。HDが登場しなければ、わざわざ「標準」と名乗る必要はなかったのかもしれない。これは推測にすぎない。ただ、ハイビジョンと並べたときにはじめて意味が決まる名前であることは確かだ。

標準偏差のStandardは、物差しのほうである。統計学者のカール・ピアソンが1893年にこの語を使いはじめた(MacTutor「Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics」の Standard Deviation の項)。値が小さければデータは平均の近くに集まり、0なら全部同じ値になる。比べる相手がいなくても、数字だけで意味が決まる。

同じStandardでも、片方は相手がいて決まり、片方は相手がいなくても決まる。SDという二文字の中にそれが並んでいる。

SDラットの体重を、平均±SDで書く。Dawleyの名前を持つ群を、ピアソンの物差しで測っているわけである。二つのSDは、同じ頁で互いを測りあっている。