略語

SE

エスイー

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

IT・システム開発

システムエンジニア

System Engineer

システム開発で、顧客の要望を聞き取って要件を決め、設計を行い、プログラマーに作業を割り振る職種。プログラミングを担うプログラマーより上流の工程を受け持つ。単に「SE」と言えば、ビジネスの場ではほぼこの意味で通じる。

要件定義はSEが顧客と詰めて、実装はプログラマーに渡します。

音響・レコーディング

効果音

Sound Effect

BGM(楽曲)とは別に、動作や場面を強調・表現するために付け加える音。足音、ドアの開閉、衝撃音などが典型で、ゲーム・アニメ・映画・舞台・ラジオで使う。素材は録音のほか、シンセサイザーやコンピュータで作ることも多い。

ここの爆発のSEは、BGMに埋もれないよう低音を足してください。

学術・研究

標準誤差

Standard Error

標本平均などの標本統計量が、標本のとり方によってどれだけばらつくかを表す標準偏差。母集団の標準偏差をσ、標本の大きさをnとすると、平均の標準誤差はσ/√nで表される。信頼区間の計算や検定の基礎になり、値が小さいほど推定が安定していると読む。

平均値の差を比べるときは、標準偏差ではなくSEを誤差棒に使った。

マーケティング・CRM

セールスエンジニア

Sales Engineer

技術の知識を持ち、営業担当と同行して顧客に製品・サービスを提案する職種。顧客の課題を聞き取って技術的な解決策を示し、社内のエンジニアとの橋渡し、導入後のフォローまで受け持つことがある。営業との役割の分け方は会社によって異なる。

明日の商談にはSEも同席させて、セキュリティ要件への回答まで済ませます。

医療・医学

てんかん重積状態

Status Epilepticus

てんかん発作が自然に止まらず続く、または意識が戻らないまま繰り返す状態。救急で緊急の対応が必要になる。けいれん性では発作が5分以上続けば治療を開始し、30分以上続くと後遺障害のリスクが高まるとされる。

搬送時にSEが続いていたため、すぐに抗てんかん薬を静注した。

医療機器

スピンエコー法(MRI)/実質的同等(FDA 510(k))

Spin Echo / Substantial Equivalence

MRIでは、90度パルスのあとに180度パルスを加えて信号(エコー)を取り出す撮像法「スピンエコー法」をSEと略す。磁場のむらによる画像の乱れに強く、一般に高速化した派生法(FSE・TSE)と並んで使われる。一方、米国FDAの市販前届出510(k)では、既存の合法販売機器と実質的に同等と認められた判定をSEといい、通知の書簡(SEレター)を受けると米国で販売できる。前者は撮像技術、後者は規制手続きの用語で、同じ医療機器の現場でも文脈で使い分ける。

このSE画像はT1強調で撮っています。/510(k)のSEレターが届いたので、米国での販売を始められます。

SEのEは六通りに読める

SEの展開形を並べると、Sの側は System、Sales、Sound、Standard、Status、Spin、Substantial と、七つとも別の語になる。Eの側は、同じ七つを数えても六通りにしか分かれない。システムエンジニアとセールスエンジニアが、どちらも Engineer だからである。残る五つは Effect(効果音)、Error(標準誤差)、Epilepticus(てんかん重積状態)、Echo(MRIのスピンエコー法)、Equivalence(FDAの510(k)での実質的同等)で、Eの読みはすべて違う。

同じ Engineer の二つも、成り立ちは同じではない。システムエンジニアは、Wikipedia日本語版の記述によれば、日本で情報システム関連の業務に就く人を指す和製英語である。英語の systems engineer はシステム工学の技術者のことで、日本のITの職種とは別物として説明されている。日本のIT業界で当たり前に通じる「SE」は、英語圏の人にそのまま言うと、別の専門分野の人だと受け取られかねない。

一方、統計の SE は、英語圏でも日本でも同じ意味で通じる。論文で図の誤差棒に SE と書いてあれば、まず標準誤差を疑ってよい。平均値の差を比べるときに、標準偏差ではなく SE を誤差棒に使う、という書き方もある。

数が合わないのではないか、と思った読者もいるはずだ。このページの業界は六つなのに、展開形は七つある。医療機器の項目だけが、SE を二つ抱えているからである。MRIでは、90度パルスのあとに180度パルスを加えて信号(エコー)を取り出す撮像法を、スピンエコー法といい SE と略す。米国FDAの市販前届出510(k)では、既存の合法販売機器と実質的に同等と認められた判定を SE といい、通知の書簡(SEレター)を受けると米国で販売できる。前者は撮像技術、後者は規制手続きの用語で、同じ医療機器の現場でも文脈で使い分けられる。「このSE画像はT1強調で撮っています」と「510(k)のSEレターが届いた」は、どちらも自然な一文である。

取り違えが起きやすいのは、同じ業界の中よりも、業界の境目である。営業同行の場面で「SEを連れていきます」と言えば、システムエンジニアの場合もセールスエンジニアの場合もある。ゲーム制作の現場では「SEを足して」は効果音のことだし、救急の申し送りで「SEが続いている」は発作の話になる。どれも前後の文脈だけで決まり、略語そのものには手がかりがない。

なお、この「Eが六通り」は展開形を並べて気づいたことで、各業界の側が互いを意識して選んだ綴りではない。