用語

シード

シード

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

スポーツ・フィットネス

シード(トーナメントの有力選手の配置・次年度の出場資格)

seed

トーナメントで有力選手やチームが序盤で当たらないよう、組み合わせを振り分けること。出場者数が2のべき乗でないときは、1回戦を免除する扱いも伴う。ゴルフなどのプロツアーでは、賞金ランキング上位者に翌年の出場資格を与える「シード権」の意味でも使う。

第1シードが2回戦から登場し、準々決勝まで同じ山の有力選手とは当たらない組み合わせになった。

証券・投資

シード(創業前後の資金調達段階)

seed round / seed stage

スタートアップの資金調達の最初の段階。創業前後に、試作品づくりや市場検証の費用をエンジェル投資家やベンチャーキャピタルから集める。この後にシリーズA、シリーズBと続き、段階が進むほど企業評価額と調達額が大きくなる。

プロダクトの試作が終わったので、まずシードラウンドで数千万円を調達する予定だ。

AI・データ

乱数シード(乱数の初期値)

random seed

擬似乱数を作る計算の出発点となる数値。同じシード値を指定すれば毎回同じ乱数列が出るため、機械学習で学習データの分割や初期重みを固定し、実験結果を再現するために設定する。

結果を再現できるよう、学習スクリプトの冒頭で乱数シードを42に固定した。

インターネット広告

シードキーワード(元になるキーワード)

seed keyword

SEOや検索広告のキーワード調査で、関連語や検索ボリュームを広げるための出発点となる、広く一般的な語。ツールにこれを入力し、そこから具体的なロングテールの語を洗い出す。

まず「調理器具」をシードキーワードにして、関連語をツールで展開した。

同じ「種」でも、まく向きが四つの業界で違う

seed は英語で「種」だ。スポーツ、金融、AI・データ、Web広告の四つの業界で使われるシードも、どれも同じ種の比喩で、同じようにまかれているに違いない。ところが並べてみると、まき方が一致しない。

散らす種、取っておく種

いちばん古い用例が確かめられるのはスポーツだ。語源辞典 Online Etymology Dictionary によると、競技の意味での seed は1898年までに確認でき、「特定の選手の名前を『広げる』ことで、大会の序盤で当たらないようにする」という発想から来ている。同じ項目が引く1898年1月13日の American Lawn Tennis の記事には、数年前に選手権のドローで最強の選手たちを「シード」することが決まった、という趣旨の記述があり、始めた当初は反対の声もあったらしい。有力選手は組み合わせ表の上にばらまかれ、決勝まで互いに離れて育つ。

ゴルフなどのプロツアーでは、同じ言葉が翌年の出場資格を指す。賞金ランキング上位者に与える「シード権」だ。こちらの種は散らされず、来年のために取っておかれる。

小さい会社の最初の段階

金融のシードは、スタートアップの資金調達の最初の段階で、あとにシリーズA、シリーズBと続く。スポーツのシードは最強の選手につくが、金融のシードはまだ何者でもない会社につく。有力かどうかで分けるスポーツと、まだ小さいことで分ける金融では、同じ語がほぼ反対の位置に置かれている。

乱数シードの性格はさらに違う。同じ数値を指定すれば同じ乱数列が出るので、研究者は学習データの分割や初期重みを固定して実験を再現する。毎回同じ芽が出ることが目的で、種から先の結果が違っていてよい他の三つとは逆の使い方だ。

Web広告のシードキーワードは、「調理器具」のような広い語をツールに入れ、そこから具体的な語を洗い出す出発点になる。種から枝が広がる様子に近いが、増えるのは売上や選手ではなく、検索される語の候補である。

金融の seed round や乱数の random seed がいつ使われ始めたかは、今回確認できた資料では裏づけが取れていない。確かめられる最古の記録は、いまのところ1898年のテニスのドローに行き着く。