用語

施主

セシュ

2つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

建設・建築

建築主・発注者

client / owner

建物の工事を依頼して代金を払う側の通称で、「建築主」「発注者」とも呼ばれる。建設工事の請負契約書では、一般に施主が「甲」、施工会社が「乙」になる。完成した建物は自分で使うほか、賃貸や売却に回すこともある。建設業法など法令の上では「発注者」「注文者」と書かれる。

施主の承認が下りるまで、仕上げ材の発注は待ってください。

冠婚葬祭・生活サービス

葬儀の施主

chief donor (funeral)

葬儀で費用を負担し、金銭面を取り仕切る人。遺族の代表として式を運営し当日に挨拶する喪主とは役割が別で、一般の家庭では遺族が両方を兼ねることが多い。故人の立場によっては、企業が施主になって費用を出す社葬のような形もある。

葬儀の費用は長男が施主として持ち、喪主は母が務めます。

施主は、もとは寺に物を施す人だった

建設工事の請負契約書では、施主は「甲」と書かれ、施工会社は「乙」になる。葬儀の場では、費用を持つ人が施主と呼ばれ、遺族の代表として挨拶する喪主とは役割が分かれる。前者は工事を発注して代金を払い、後者は式の費用を負担して金銭面を取り仕切る。畑の違う二つの業界で同じ語が使われているが、どちらの意味もさかのぼると、仏教語の「施す人」に行き着く。

梵語の dāna-pati から

仏教で「施主」は、僧や寺に金銭や品物を差し出す信者を言う。辞書類によれば、梵語の dāna-pati(ダーナパティ)に当たる語で、同じ語を音で写したものが「檀越(だんおつ)」「檀那(だんな)」である。コトバンクの「檀越」「檀那」の項や ja.wiktionary の「施主」の項に、こうした説明が載っている。「檀那」は商家の主人を呼ぶ語や、妻から見た夫を呼ぶ語にもなった。同じ語源から出た別の枝である。

特定の寺を支える家を言う「檀家」も同じ系統の語で、江戸時代に寺請制度(幕府がキリスト教を禁じるために、寺が各家の宗旨を証明した仕組み)を通じて広まったとされる。寺に施す側の人が、家単位の制度として固まっていった時期にあたる。

「払う側」が二つの業界に残った

建設の施主は、建設業法など法令の上では「発注者」「注文者」と書かれる。葬儀の施主と喪主は役割が別だが、一般の家庭では遺族が両方を兼ねることが多い。

二つの業界に共通するのは、金を出す側であることだ。寺に施す人の意味が、工事を頼んで払う人や、式の費用を持つ人へ広がったと考えるのが自然に見える。ただし、どの時期にどの順で広がったかを示す資料は今回確認できていないので、これは推測にとどめる。

並べてみると、違いも見える。建設の施主は代金と引き換えに建物を受け取る。葬儀の施主が費用と引き換えに手にするのは、式の運営という形のないものだ。しかも葬儀の施主は、遺族でなく企業になることがある。社葬がそうで、費用を出す側は個人とは限らない。