用語

セット

セット

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

映画・映像・アニメ

撮影セット

set

映画やテレビで、撮影用に設ける建物・街路などの装置。

出典:デジタル大辞泉(小学館)/コトバンク

映画やドラマの撮影で、物語の舞台となる部屋や街並みを作り物で再現したもの。スタジオの中に組むものを単にセット、屋外の敷地に大規模に建てたものをオープンセットと呼び分ける。美術部が設計し、大道具が建て込む(組み立てる)。

明日は商店街のオープンセットで夜のシーンを撮るので、照明の仕込みは午前中に終えてください。

演劇・舞台・伝統芸能

舞台装置

set

芝居の場面をつくるために舞台上に組む装置。建物や樹木、背景などの大道具を中心に、場面ごとに組み替えながら使う。現場では舞台装置とほぼ同じ意味で使われる。

二幕のセットは転換に時間がかかるので、暗転の間に回り舞台で入れ替える。

スポーツ・フィットネス

セット(テニス・卓球・バレーボール/筋力トレーニング)

set

競技では、テニス・卓球・バレーボールなどで1試合を構成する一区切りの勝負。3セットマッチなら先に2セットを取った側の勝ちになる。フィットネスでは、同じ動作を決まった回数(レップ)続けるひとまとまりを指し、「3セット×10回」のように休憩をはさんで繰り返す。

スクワットは10回を1セットとして、休憩を1〜2分とりながら3セットやります。

美容・ウェルネス

ヘアセット

hair set

美容室で、髪形を整える仕上げの施術。カットやカラーとは別のメニューとして、結婚式や式典の前などに頼まれることが多い。ブロー(ドライヤーで乾かして形をつくる技法)やヘアアイロン、ローラーなどを使って形をつくる。

友人の結婚式があるので、朝9時にヘアセットを予約しました。

建てるセットと数えるセット、別々の出自

撮影所の大道具が建てたセットは、撮影が終われば壊される。テニスのセットは、6ゲームをひとまとまりとして数えるための単位だ。スクワットの「3セット」は、回数を束ねて数えた結果である。建てる物と数える単位が、同じ「セット」という音で呼ばれている。なぜだろうか。

英語の語源辞典(Online Etymology Dictionary)によれば、答えは、つづりが同じ二つの語が英語の中で合流したことにある。

一つは動詞の set。古英語の settan にさかのぼり、もとは「座らせる」「置いて落ち着かせる」を意味した。「座る」(sit)の使役形にあたる。もう一つは名詞の set で、「ひと組」の意味だ。こちらは15世紀半ばに、古フランス語の sette から入った。sette は secte(宗派)の変形で、元をたどればラテン語の secta、「従う人びと」である。同辞典によれば、「ひと組」の set はもともと sect の変化したものだと語源学者スキートが唱えた。その後は動詞 set の影響で、「ひとまとめに置かれたもの」のように感じ取られるようになったという。宗派と「ひと組」が親戚だとは、意外だった。

では、四つの業界の「セット」はどちらにあたるのか。

テニスの set は、同辞典に「6ゲームを一単位とする」意味として1570年代の例が挙がる。名詞の「ひと組」の側だ。筋トレの「3セット×10回」も、回数を束ねた単位という点で同じ側に置いてよさそうだ。

舞台と撮影の「セット」は、置いて建てるのだから動詞の側だろう。舞台の set piece(木など、単独で立つ背景の一片)は、1859年までに英語の用例がある。ただしこれは、舞台装置という意味の set 全体がいつ生まれたかを示すものではない。

ヘアセットはどうか。髪を形に収めて落ち着かせるのだから、動詞の側だと私は読む。ただ、語源辞典で確かめた話ではない。

二つの語が一つの音に合流しているから、予約画面にはカット、カラー、ヘアセットと並び、トレーニングの記録帳には「スクワット 3セット」と書かれる。結婚式の朝にヘアセットを頼む手と、ジムで回数を書き込む手は同じなのに、片仮名の背後では、座らせる語と宗派に連なる語が別々に働いている。