用語

ショート

ショート

3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

証券・投資

売り持ち

short position

売り持ちポジションのこと。保有する金融資産の買い持ち高と売り持ち高を比較し、売り持ち高が上回っている状態をショートポジションと呼びます。

出典:金融・証券用語解説「ショートポジション」・大和証券

保有する資産のうち、売りが買いを上回っている状態や、そのための売り建て。株の空売り、FX、先物で使い、値下がりすると買い戻しの差額で利益が出る。反対は買い持ちの「ロング」。FXでは「ドルショート」のように通貨名に付けて売り持ちを表す。

決算前にショートを積み増していたが、急騰して買い戻しを迫られた。

半導体・電子部品

短絡

short circuit

電位差のある2点が、抵抗の小さい導体で意図せず結ばれてしまう不具合。はんだブリッジや絶縁劣化、異物の付着などで起こり、大電流が流れて部品の発熱や焼損につながる。基板の検査や故障解析では、電源とグランドの間の導通を見て「ショートしている」と判断する。

リフロー後の検査で、隣り合うピンがはんだでショートしている基板が見つかった。

スポーツ・フィットネス

ショート(野球:遊撃手)

shortstop

野球で二塁と三塁の間を守る内野手、またはそのポジション。英語の shortstop を略した呼び方で、守備番号は6。内野の要として広い守備範囲と強い肩が求められ、スコアブックでは「6」と記す。

彼は高校時代からショートを任され、併殺の中心だった。

ショートを日本語にすると三通りになる

基板の検査で「ショートしている」と言えば、電源とグランドのあいだが導通しているという報告になる。証券会社の画面で「ショートを積み増した」と言えば、売り持ちを増やしたことになる。野球のスコアブックにある「6」は、ショートの守備番号だ。三つとも英語の short をそのまま音にした語だが、漢字に直すと、短絡、売り持ち(あるいは空売り)、遊撃手になる。短い、売る、遊ぶと、訳し分けられた方向がばらばらなのである。

「短遮」から「遊撃」へ

三つのうち、訳語の経緯がいちばん追いやすいのは野球である。ポジションの発案者として語られるのは、ニッカーボッカー・クラブの Doc Adams で、1849年から50年ごろに始めたとされる。当時のボールは軽く、外野からの返球が内野まで届きにくかった。そこで外野と内野のあいだに立って中継する選手を置いた。この選手は英語では short fielder とも呼ばれ、外野手の一種のような位置づけだった(英語版 Wikipedia「Shortstop」「Doc Adams」による)。のちにボールが改良されて飛距離が出るようになり、Adams 自身が内野に移ったと、同じ記述にある。

日本語への訳には二段階あったと伝わる。日本語版 Wikipedia「遊撃手」によれば、正岡子規は short を「短く」、stop を「遮る」と直訳して「短遮」「短遮者」としたという。その後、中馬庚が「ショート・ストップは戦列で時期を見て待機し、動き回ってあちこちを固める『遊軍』のようだ」と説き、そこから「遊撃手」という名称が広まったとされる。直訳の「短遮」は定着せず、軍隊の比喩から出た言葉が残った。

日本の野球では stop を落として「ショート」とだけ言う。名前の前半が、そのまま通称になったわけだ。

短絡と売り持ち

電子回路の short は short circuit の略である。短絡の字は「短い」に「からむ」「つなぐ」の意味の字を並べたもので、本来つながるはずのない2点が、短い道でつながっている様子を指す。

金融の short は、売りが買いを上回った状態を指し、反対は「ロング」である。日本語は意味のほうを取って「売り持ち」とし、「短い」という字は消えた。short と呼ぶ由来としては、記録を刻んだ棒の長い側と短い側に由来するという説明も見かけるが、今回確認できた資料では裏づけが取れなかったため、ここでは触れない。

検査員の「ショートしている」、画面の「ショートを積み増した」、スコアブックの「6」は、日本語の側から見ると、同じ英単語から来たとは思えない。