略語

SI

エスアイ

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

IT・システム開発

システムインテグレーション

System Integration

顧客の業務を分析し、システムの企画・構築・運用支援までをまとめて請け負う事業。ハードやソフトを組み合わせて一つのシステムに仕上げる点が特徴で、これを担う会社は SIer と呼ばれる。大手が一括受注し、下請けへ再委託する構造が語られることも多い。

この案件はSIで一括受注し、開発は協力会社に分けて発注する。

分析・計測

国際単位系

Le Système international d'unités(International System of Units)

長さ・質量・時間・電流・熱力学温度・物質量・光度の7つの基本単位を土台に、物理量を一貫した体系で表す世界共通の単位系。十進法を原則とし、巨大・微小な値は接頭語(キロ、ミリなど)を付けて表す。計量・計測の現場で単位の基準になる。略称はフランス語名に由来する。

質量はSI単位のkgで記録し、微小な値はmg・µgのように接頭語を付けて示す。

海運・貿易

船積指図書(船積依頼書)

Shipping Instruction

荷主やフォワーダーが、ブッキング確定後に船会社へ送る書類情報。荷送人・荷受人、貨物の内容、重量・容積、運賃条件などを伝え、船荷証券(B/L)や積荷目録の元データになる。船会社の SI カットオフまでに出さないと、ロールオーバーや遅延手数料の原因になる。

ブッキングが取れたので、明日の午前中までに SI を船会社へ入力してください。

半導体・電子部品

シグナルインテグリティ(信号品質)

Signal Integrity

電気信号の品質を表す指標の総称で、基板や配線の設計で波形が乱れないかを確かめる分野。リンギング、クロストーク(隣の配線への漏れ)、グラウンドバウンス、ひずみ、信号損失、電源ノイズなどが問題になる。高速信号では設計段階でのシミュレーションが欠かせない。

このDDR配線はSI解析で波形のリンギングを確認してから、基板を発注する。

建設・建築

スケルトン・インフィル

Skeleton Infill

共同住宅で、柱・梁・床などの構造躯体(スケルトン)と、住戸内の内装・設備(インフィル)を分けて造る工法、またはその住宅(SI住宅)。躯体は長く使えるよう耐久性を重視し、内装・設備は住まい手の要望に合わせて変えやすく造る。国土交通省は、内装が未完成のスケルトン状態の住戸を含む建物の登記上の扱いも整理している。

このマンションはSI住宅なので、入居者が替わるたびに間取りや設備を入れ替えられる。

医療・医学

仙腸関節

sacroiliac joint

骨盤で仙骨と腸骨をつなぐ関節(sacroiliac joint)を指す略。体重を支え、脚からの力を受ける役割がある。SI関節痛・SI関節障害などの形で、腰や臀部、脚にかけての痛みの原因として語られ、神経を圧迫する病気と間違われやすい。

腰から脚への痛みの原因がSI関節かどうかを調べるため、診断のためのブロック注射を行った。

SI解析の結果を、SI単位で書く

高速信号の基板を設計する人は、同じ資料の中で二つの「SI」を使う。ある行には「SI解析で波形のリンギングを確認」と書き、隣の表には立ち上がり時間を ns、クロックを GHz と書く。前者は Signal Integrity、後者は SI 単位の SI だ。同じ二文字が、同じページに並んでいる。

並べてみると、片方だけ素性が違う。SI には少なくとも六つの意味がある。System Integration(IT)、Shipping Instruction(海運)、Signal Integrity(電子)、Skeleton Infill(建設)、sacroiliac joint(医療)。ここまでの五つは、英語の語を頭から読めばそのまま SI になる。

残る一つが国際単位系である。英語では International System of Units と呼ぶ。頭文字を取れば ISU になるはずだ。それなのに、英語の資料でも SI と書く。なぜだろうか。

略称のほうが先に決まっていたからだ。1960年の第11回国際度量衡総会の決議12は、六つの基本単位にもとづく体系を、フランス語で “Système International d’Unités” と呼ぶと定めた。さらに、この体系の国際略称を SI とする、とも定めている。BIPM(国際度量衡局)が載せている決議の正式な版はフランス語だという。英語名は訳語で、略称はフランス語の頭文字のまま世界に広がった。

決議のときの基本単位は、メートル、キログラム、秒、アンペア、ケルビン、カンデラの六つだった。物質量のモルが七つ目に加わったのは、1971年の第14回総会である。いま「七つの基本単位」と覚えている数は、略称が決まってから11年後のものだ。

ほかの五つは、展開すれば英語の綴りがそのまま出てくる。国際単位系だけは、英語名を展開しても SI にならない。SI 単位の SI を英語の頭文字だと思って読むと、ここでつまずく。

冒頭の資料に戻ると、リンギングを確認する解析の SI は、英語の Signal Integrity だ。その結果を書く表の ns と GHz は、フランス語の頭文字を持つ体系の単位だ。二文字は同じでも、同じ頁の中で、片方は英語から、片方はフランス語から来ている。