略語

SL

エスエル

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

鉄道

蒸気機関車

Steam Locomotive

蒸気機関を原動機とする機関車。略してSLともいう。

出典:日本大百科全書(ニッポニカ)(小学館)/コトバンク

石炭などを燃やして得た蒸気で走る機関車の略称で、英語の頭文字から来ている。現在は定期の運用を離れ、保存車両を観光列車として走らせる場面で「SL列車」「SL運転」のように使われる。路線名と並べた愛称にも定着している。

週末は山口線でSLの牽引する列車に乗る予定だ。

スポーツ・フィットネス

回転(アルペンスキー:スラローム)

Slalom

アルペンスキーの技術系種目の一つで、旗門(ポール)の間隔が種目中もっとも狭く、素早く正確なターンが求められる。大回転(GS)やスーパー大回転(SG)、滑降などと並べて、成績表や大会要項でSLと略記される。

今季はSLとGSの2種目にエントリーした。

証券・投資

ストップロス(損切り)

stop loss

FX取引におけるストップロスとは、損失を確定する行為(損切り)、もしくはその際の価格(損切りライン)のことです。

出典:OANDA Lab 用語解説「ストップロス」(OANDA証券)

FXや株式の取引で、含み損が広がりすぎる前に決済して損失を確定させること、またはその価格(損切りライン)。あらかじめ現在値と逆方向に置く逆指値注文で設定し、チャートソフトや注文画面ではSLやS/Lと略記される。利益確定のTP(テイクプロフィット)と対で使う。

エントリーと同時にSLを現在値の50pips下に入れた。

建設・建築

スラブレベル(スラブ天端の高さ)

Slab Level

地面からフローリングなどの下にある構造部材の天端までの高さ

出典:Panasonic 建築・設計の用語辞典「レベル」(パナソニック)

建築図面で、床スラブ(床を支える鉄筋コンクリートなどの板)の上面の高さを示す記号。仕上げ材を張った後の床面を示すFL(フロアレベル)とは区別され、両者の差が床の仕上げ厚になる。構造図や設備図で、基準の高さ(GL=地盤面の高さ)からの寸法として記される。

この部屋はSLがFLより50mm下がっているので、床仕上げの厚みを確認しておいて。

SLは、指す先が少しずつずれていく

「SLやまぐち号」の SL は蒸気機関車(Steam Locomotive)の略である。ところが「号」のついた名前は、機関車一両ではなく列車の名前だ。客車を何両もつないで山口線を走る全体を指している。機関車の略号が、なぜ列車の名前に入っているのか。

経緯を見ると、不思議でもなんでもない。国鉄の蒸気機関車が牽引する旅客列車は、1975年12月14日に室蘭本線で走ったものを最後にいったん姿を消した。その約3年半後の1979年8月1日、C57形1号機が客車を引いて走り出し、SLやまぐち号が生まれた。毎日の足として走る機関車がなくなってから、SL は「乗りに行くもの」の名前になったわけだ。「SL列車」「SL運転」という言い方も、そこから普通になった。機関車の名前が、機関車の引くものまで含んで使われている。

スキーの SL は、もっとはっきりずれている。スラロームという語はノルウェー語に由来し、百科事典マイペディアによれば、斜面を蛇行して下りたときのシュプール(滑った跡)が蛇のように見えることから来ている。つまり最初に名づけられたのは、競技でも旗門でもなく、雪の上に残る跡の形だったことになる。それがいつのまにか、旗門の間隔がいちばん狭い種目の名前になり、成績表には「SL」「GS」と並ぶ。

ここまで来ると、ストップロスを見る目も変わる。OANDA証券の用語解説は、FX取引におけるストップロスを「損失を確定する行為(損切り)、もしくはその際の価格(損切りライン)のこと」と説明している。行為と価格が、一つの語に同居している。「SL を入れた」と言えば注文を出したことだが、「SL に引っかかった」と言えば、その価格に値が届いたことになる。

建築図面の SL は、スラブレベルである。床スラブ、つまり床を支えるコンクリートなどの板の上面の高さを示す。パナソニックの建築・設計の用語辞典「レベル」は、これに近い高さを「地面からフローリングなどの下にある構造部材の天端までの高さ」と説明している。同じ部屋でも、歩く人が踏む面は、その上に仕上げ材を張った FL(フロアレベル)のほうだ。SL が FL より 50mm 下がっていれば、その 50mm が床仕上げの厚みになる。床は一つなのに、図面には高さが二つ書かれている。

並べてみると、鉄道・スキー・FX の三つの SL は同じ動き方をしている。機関車から、それが引く列車へ。滑った跡から、跡を残す競技へ。損切りという行為から、その価格の線へ。どれも、最初に名づけられたものの隣へ、指す先が一歩ずれた。略語が先にあって意味が増えたのではなく、一つの名前が隣のものを呼び込んでいった形に見える。建設の SL だけは逆で、ずれないまま残る。仕上げを張る前の面を指し続け、ずれは FL との差として図面に書き込まれる。

ずれた先で、元の意味が消えたわけでもない。山口線の機関車は今も SL であり、チャート上の線も、損を切るという行為の跡である。床の仕上げの下には、SL の高さのコンクリートが今もある。

注文画面の SL 欄に数字を入れるとき、そこに入れているのは行為なのか、価格なのか。たぶん、入れている本人もどちらか決めずに入れている。