SOP
エスオーピー
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
量産開始
Start of Production
新型車や新部品が、試作や少量の先行生産を経て、量産ラインで本格的に作り始められる時点。開発・調達・工場・サプライヤーの日程はこの日を起点に逆算して組まれ、「SOPまであと半年」のようにマイルストーンとして使われる。量産開始後は台数を段階的に増やす立ち上げ期間が続く。
新型ブレーキの部品供給は、SOPの3か月前までに初期流動品の承認を取る計画です。
スモールアウトラインパッケージ
Small Outline Package
半導体ICのパッケージ形状の一つ。四角い樹脂の本体の向かい合う2辺から、ガルウイング(かもめの翼)状に折れた端子が出ており、基板の表面に載せてはんだ付けする表面実装向け。端子間隔は1.27mmが標準で、薄型のTSOP、細ピッチのSSOP・TSSOPなどの派生形がある。
このオペアンプはSOP8で供給されるので、基板のランドパターンもそれに合わせます。
標準作業手順書
Standard Operating Procedure
医薬品の製造所が、GMP(医薬品の製造管理・品質管理の基準)に基づいて作る手順書。製造管理、試験検査、変更管理、逸脱管理、バリデーション、教育訓練などの業務ごとに、誰がどう行うかを文書で定め、その手順どおりに実施した記録を残す。査察ではSOPの有無と遵守が問われる。
試験室の機器校正はSOPに沿って実施し、記録を品質部門が確認します。
販売・生産計画(S&OP)
Sales and Operations Planning
営業・生産・調達などの部門が需要と供給の計画をすり合わせ、中長期の販売・生産の数量を決める計画業務。SCMの計画領域の言葉で、一般には「S&OP」と書くが、SAPのERPでは製品グループ単位の販売・生産計画の機能名が「SOP」で、その利用現場ではSOPと略される。標準作業手順書のSOPとは別物。
SAPのSOPで製品グループごとの販売計画を立て、所要量計画に引き渡します。
「SOPが遅れる」と聞いて、何が遅れたのか
新型ブレーキの部品を供給する工場の会議で、誰かが言う。「SOPが遅れそうです」。
部屋にいるのは、調達の担当、基板の設計者、品質保証の責任者、生産計画の担当としよう。四人とも、すぐにうなずく。そして、四人が思い浮かべたものは、おそらく別々である。
調達の担当にとって、SOPは日付だ。Start of Production、量産開始。試作や少量の先行生産を経て、量産ラインが本格的に動き出す日で、開発も調達も工場もサプライヤーも、この日から逆算して日程を組む。「SOPまであと半年」と言うとき、半年先に待っているのは暦の上の一点である。遅れるとは、その点が後ろへずれることを指す。
基板の設計者にとっては、部品の形だ。Small Outline Package。四角い樹脂の本体の向かい合う2辺から、かもめの翼のように折れた端子が出ている表面実装用のICパッケージで、端子の間隔は1.27mmが標準になる。SOP8と書かれた部品なら、基板のランドパターン(部品をはんだ付けする銅箔の座)も、それに合わせて描く。遅れるのは、その部品の入荷か、図面の確定だろう。
品質保証の責任者は、文書を思い浮かべる。Standard Operating Procedure、標準作業手順書。医薬品の製造所なら、GMPに基づいて、製造管理、試験検査、変更管理、逸脱管理などの業務ごとに、誰がどう行うかを書き、そのとおりにやった記録を残す。査察で問われるのは、手順書があるかと、守られているかの両方だ。遅れるのは、書き上げか、承認である。
最後に、生産計画の担当。営業・生産・調達が需要と供給をすり合わせる Sales and Operations Planning を思い浮かべる。一般には「S&OP」と書くが、SAPのERPには製品グループ単位で販売・生産計画を立てる機能があり、その機能名が「SOP」である。使う現場では、そのまま略される。なぜ「&」が落ちた形が定着したのかは、確かめられていない。遅れるのは、計画の入力と合意だ。
日付、部品、文書、計画。四つを並べると、自動車だけが違うことに気づく。ほかの三つは、手を入れて作り、書き換えられるもの。自動車のSOPは、ただ「来る」。積み上げた作業で近づいていく先であって、書き換える対象ではない。もっとも、その日付が「ずれる」ことはあるのだが。
では、会議の紙に「SOP」とだけ書いてあったら、どう読み分けるか。これは筆者の見立てにすぎないが、近くの動詞が手がかりになるだろう。「迎える」「立ち上げる」なら日付。「実装する」「載せる」なら部品。「改訂する」「承認する」なら手順書。「立てる」「すり合わせる」なら計画。
冒頭の会議に戻ると、あの一言への返事は「どのSOPですか」でよかった。基板の上に載ったSOP8の8本の端子が、いつ届くかを数えている人もいるのだから。