ソース
ソース
3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ソースコード・原始プログラム
source code
プログラミング言語で書かれた、人間が読み書きできる形のプログラム。開発現場では「ソースコード」を略して単に「ソース」と呼ぶ。コンパイラなどで機械が実行できる形に変換する前の状態で、開発側の資産として原則非公開だが、公開するものはオープンソースと呼ぶ。
バグの原因をソースで追いかけたが、該当箇所が見つからない。
ソース(FETの端子)
source
MOSFETなど電界効果トランジスタ(FET)の電極の一つで、ゲート・ドレインと並ぶ端子にあたる。キャリア(nチャネルでは電子)をチャネルへ送り込む側で、ゲート電圧によってソースとドレインの間に流れる電流を制御する。回路図では記号Sで示す。
ゲート電圧はソース基準で与えるので、ソース側の配線インピーダンスにも注意してください。
ソース機器・音源
source
オーディオシステムで、音の信号を最初に送り出す側の機器や、再生する音源そのものを指す。CDプレーヤーやネットワークプレーヤーなどがソース機器にあたり、アンプやスピーカーはその後段に並ぶ。「ハイレゾソース」のように音源データの意味でも使う。
アンプはそのままで、ソースをCDプレーヤーからネットワークプレーヤーに替えて聴き比べた。
ソースは三つとも上流、下流の名前がばらばら
「ソース」は IT でも電子回路でもオーディオでも、流れの出発点を指す。ところが、その出発点から下流をたどると、置かれているものの名前は三業界でまったく合わない。
下流に付いた名前
電子回路では、FET の三つの端子が「ソース」「ドレイン」「ゲート」と呼ばれる。source は水の湧き出る源、drain は水を抜く排水口、ゲートは水門にあたる。キャリア(電流を担う電子や正孔)をチャネルに送り込む側がソースで、受け取る側がドレインである。FET の理論が W. ショックレーによって論文にまとめられたのは1952年で、この三つの呼び名は英語圏の文献で1952年以来使われている、と電子工学の解説書にある。
オーディオでは、CD プレーヤーやネットワークプレーヤーのように信号を最初に出す機器がソースで、その先にアンプ、スピーカーと続く。下流の機器は「増幅するもの」「音にするもの」と、役割どおりに呼ばれる。
IT のソースはソースコードの略で、下流にあるのはコンパイラが作る実行形式である。流れ込む先は機械なので、人間が読める形はそこで失われる。
並べると、FET の受け手は「ドレイン」、オーディオの受け手は「アンプ」、IT の受け手は機械語になる。三業界でソースの先の語彙に共通するものはない。
「ソースを公開する」という言い方
IT のソースには、他の二つにない事情がある。下流へ渡すとき、あえて渡さない選択ができるのだ。実行形式だけを配り、ソースは手元に置く。逆に、ソースを公開したものが「オープンソース」と呼ばれる。
この呼び名が生まれたのは1998年である。同年2月、Netscape がブラウザのコードを公開する方向に動いたのを受けて、米国のフォーサイト研究所(カリフォルニア州ロスアルトス)で集まりが開かれた。そこで同研究所の共同創設者クリスティン・ピーターソンが、それまでの「フリーソフトウェア」より企業に説明しやすい名前として「open source」を提案した、と同研究所のサイトに書かれている。「free」には「無料」の意味もあって誤解されやすい、というのが理由だった。
FET のソースは、1952年の呼び名のまま今も「ソース」である。IT のソースは、前に「オープン」を付けるかどうかが論点になり、形容詞を得て独立した用語になった。三つのうち、そうなったのは IT だけだ。