SS
エスエス
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
サービスステーション(給油所)
service station
ガソリンや軽油を自動車に給油する給油所を、石油業界・行政ではSSと呼ぶ。資源エネルギー庁は、市町村内の給油所が3か所以下の地域を「SS過疎地」とし、地域の燃料供給をどう維持するかを政策課題に挙げている。灯油の配達拠点としても使われる。
人口減で町内のSSが1か所だけになり、冬場の灯油配送の維持が課題になっている。
浮遊物質量
suspended solids
水中に懸濁している不溶性の粒子の量で、水質の汚れを見る指標のひとつ。環境省の測定法では、目開き2mmのふるいを通した試料をガラス繊維ろ紙(孔径1μm)でろ過し、残った物質を乾燥させて重さを量り、mg/Lで表す。河川・湖沼の環境基準や排水基準に使われる。
工事に伴う濁水の排水は、SSの基準値を超えないよう沈殿池で処理した。
遊撃手(野球)
shortstop
野球で二塁と三塁の間を守る内野手の守備位置。英語のshortstopの略で、スコアや記録では守備番号6にあたる。広い守備範囲と強い肩が求められる。ポジション表記として、ほかの内野手の1B・2B・3Bと並んで使われる。
ロースターの表では、背番号6の選手がSSとして登録されている。
一般構造用圧延鋼材
Rolled Steels for General Structure
JIS G 3101で規定される、建築・橋梁・機械構造などに広く使う汎用の圧延鋼材の記号。代表的なSS400では、後ろの数字が引張強さの下限(400 N/mm²以上)を示す。溶接性・加工性がよく入手しやすいため、鋼材の標準的な材料として流通する。
架台の材料はSS400の平鋼で見積もってください。
春夏(シーズン)
Spring/Summer
アパレルの商品展開を春夏と秋冬に分けるときの春夏の略で、AW(Autumn/Winter、秋冬)と対になる。SS25・25SSのように年号を添えて呼び、実際の季節より先行して売り場に並ぶ。MDや仕入れの計画はこの単位で組まれる。
来年のSSの店頭展開は、2月から薄手の商品を前倒しで入れる。
SSの二つのSは、どこで切るか
SSと書かれた看板を見て給油所を思い浮かべる人もいれば、遊撃手を思い浮かべる人もいる。水質の報告書に載るSSは suspended solids で、アパレルの売り場では Spring/Summer を指し、鋼材の世界には SS400 という規格がある。どれも二語の頭文字に見えるが、そのうち給油所と遊撃手は、できた事情が際立って違う。
英語にない「ガソリンスタンド」
日本の給油所は「ガソリンスタンド」と呼ばれる。これは gasoline stand をもとにした和製の言い方で、英語では米語が gas station、英国では petrol station と呼ぶ(コトバンク、Weblio の解説による)。日本でもガソリン以外の商品や各種のサービスが増えるにつれて、service station、略して SS という呼び方が広まったと説明されている。英語に近い呼称へ寄せ直した結果の略号である。資源エネルギー庁も、市町村内の給油所が3か所以下の地域を「SS過疎地」と呼び、この略号を行政用語として使っている。
「short」は距離のことだった
野球の SS は shortstop の略で、守備番号は6。この位置の起源は1840年代末から50年代初めのニッカーボッカーズにさかのぼり、ドク・アダムズが考案したとされる(ベースボール殿堂、SABR の記事による)。当時のボールは軽く、外野からの送球が内野まで届きにくかった。そこで外野手の送球を受けて中継する「short fielder(短い距離の野手)」を置いたのが始まりで、位置も今より後ろの、第四の外野手に近い場所だったという。ボールが改良されてアダムズが内野に入り、いま見る遊撃手の守り方は、ブルックリン・アトランティックスのディッキー・ピアースが最初に始めたと伝えられている。
遊撃手には広い守備範囲と強い肩が求められる。だから「short は小柄な選手か、守備範囲の狭さを指すのだろう」と考えたくなるが、もとの意味は外野と内野をつなぐ短い送球の距離だった。
給油所の SS は呼称を整え直すために生まれ、野球の SS は道具の不足を補うために生まれた。片方は後から付けた略号で、もう片方は百年以上前の守備位置の名前が略されて残ったものである。水質の SS は、ろ紙に残った粒子を乾かして量る測定値で、mg/L で表す。春夏の SS は、売り場が季節より先に動くための計画用の記号だ。給油所の看板に出ている二文字と、ロースターの背番号6の横に並ぶ二文字は、同じ綴りでも、できた経緯は別である。