用語

ステージ

ステージ

5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

医療・医学

病期

stage

がんがどこまで進んでいるかを示す区分で、「病期」とも呼ぶ。原発巣の大きさや広がり(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)を組み合わせる TNM 分類にもとづき、0期からIV期に分けられる。数字が大きいほど進行している。

検査の結果、ステージIIと診断されて手術の日程を相談した。

ゲーム・eスポーツ

面・マップ

stage

プレイヤーが冒険や対戦を行う、区切られた場面や地域。草原・水中・工場など背景の違いで作り分けられ、「3面」「ステージクリア」のように進行の単位としても数える。対戦ゲームでは試合ごとに選ぶ「ステージセレクト」がある。

このゲームは全8ステージで、各ステージの最後にボスが出る。

半導体・電子部品

ステージ(可動台)

stage

半導体の露光装置などで、ウエハーを載せて動かす台。微細な回路を焼き付けるため、ウエハーを高速かつ正確に駆動して位置決めし、ナノメートル単位の精度が求められる。装置内の部位名として「ウエハーステージ」と呼ぶ。FPD露光装置では大型のガラス基板を載せる超大型ステージが使われる。

ウエハーステージの位置決め精度が、重ね合わせ精度を左右する。

音響・レコーディング

ステージ(増幅段・ゲインステージ)

gain stage

マイクプリアンプ、ミキサーのインプットゲインやフェーダー、エフェクト、パワーアンプなど、信号の大きさを変えられる各段のこと。録音やミックスでは、各段のレベルを適切に揃えて歪みとノイズの両方を避ける作業を「ゲインステージング」と呼ぶ。

最初のステージで入力を上げすぎると後段でひずむので、ゲインステージングを見直した。

自動車・輸送機器

ステージ(チューニングの段階)

stage

自動車のチューニングで、改造の度合いを表す段階。「ステージ1」は大きな部品交換を伴わないECUのソフト書き換えが中心で、「ステージ2」は排気系やダウンパイプ、インタークーラー、吸気系などの部品交換を前提に書き換える、というのが一般的な目安。具体的な内容はチューナーや車種によって異なる。

まずECUを書き換えるだけのステージ1にして、マフラーとインタークーラーを替えてからステージ2に進んだ。

「ステージ2」を喜ぶ人と、身構える人

診察室で「ステージ2です」と言われれば、誰でも身構える。ところが車のチューニングの相談で「ステージ2にしましょう」と言われたら、話はむしろ前向きに進む。数字は同じで、向きも同じだ。大きいほど先へ進んでいる。それなのに、片方は止めたい数字で、片方は自分で上げる数字になる。数字は何を数えているのだろうか。

医療の側から見る。病期は、原発巣の大きさや広がり(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)を組み合わせた TNM 分類にもとづいて、0期からIV期に分けられる。数えているのは体の中の事実で、本人にも医師にも選べない。検査の結果が数字になるだけだ。

チューニングの側は逆になる。ステージ1は大きな部品交換を伴わない ECU(エンジン制御用のコンピューター)のソフト書き換えが中心で、ステージ2になると排気系、インタークーラー、吸気系などを替えることが前提になる、というのが一般的な目安だ。数えているのは、持ち主が何をどこまで買って替えたかである。しかもこの目安はチューナーや車種で変わる。病期のように国際的な分類があるわけではないから、「ステージ2」の中身は店に聞かないとわからない。

ゲームの「ステージ」は、この二つの中間にある。「3面」「ステージクリア」と数えるときは進行そのものを数えていて、遊ぶ側は上がりたくて遊ぶ。ただ、対戦ゲームの「ステージセレクト」では数えない。試合のたびに、戦う場所を選ぶだけだ。

音響のステージは、そもそも順位ではない。マイクプリアンプ、ミキサーのフェーダー、エフェクト、パワーアンプと、信号の大きさを変えられる各段を、前から順に通っていく。最初の段で入力を上げすぎれば、後ろの段でひずむ。ここで数えているのは、通る順番である。

半導体露光装置のウエハーステージになると、数字そのものが消える。ウエハーを載せて動かし、ナノメートル単位で位置を決める台である。

五つとも別の意味なのに、語源の側から見れば同じ棚に入る。Online Etymology Dictionary によれば、英語の stage は古フランス語の estage から来ていて、その estage には「建物、住まい」「上演の舞台」「段階」「旅の途中の休み場所」が最初から同居していた。さらにさかのぼると、俗ラテン語の「立つ場所」にたどり着く。階段の一段も、役者の足場も、ウエハーの台も、もとは立つ場所である。

立つ場所に、数字を振る業界と振らない業界がある。振った業界の中でも、数字を決めるのが検査結果なのか、財布なのかで、読む人の表情は変わる。「ステージ2」と聞いたとき、あなたの頭に浮かぶのが診察室か整備工場かで、この言葉の意味はほとんど決まってしまう。