用語

ストック

ストック

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

証券・投資

株式

stock

証券の世界では、投資対象としての株式そのものを指す。投資家の株式への投資意欲を「ストックマインド」、会社が従業員などに決めた価格で自社株を取得する権利を与える報酬制度を「ストックオプション」というように、株式に関わる複合語の形で使われることが多い。

今期はストックオプションの行使条件を見直し、株価連動の報酬を厚くした。

会計・税務・監査

ストック(ある時点の残高)

stock

一定期間の損益収支がフローであり、ストックとはある時点での資産の量を指す。

出典:マネーフォワード クラウド ビジネス用語集(マネーフォワード)「ストック」

ある一時点でたまっている量を表す概念で、一定期間の増減であるフローの対になる。財務諸表に当てはめると、フローは損益計算書、ストックは貸借対照表の資産・負債・純資産にあたる。売上や利益は期間で測るフロー、現預金や借入金の残高は決算日で測るストックと整理する。

利益はフローなので、手元資金というストックの増減とは別に見る必要がある。

マーケティング・CRM

ストック型ビジネス(継続収益)

stock-type business

顧客から定期的・継続的に収益が入る仕組みを指す。サブスクリプションや会員制サービスが典型で、契約が続くかぎり収入が積み上がるため、業績が安定しやすい。都度取引で毎回売り直すフロー型と対にして使い、顧客を増やすだけでなく解約を防ぐ施策(継続率の管理)が重視される。

新規獲得より、ストック型の月額契約をどれだけ積み上げられるかを今期の目標にした。

スポーツ・フィットネス

ストック(スキーのポール)

Stock(ドイツ語で「杖」)

スキーでバランスを保ち、ターンや加速を助けるために両手に持つ棒。ドイツ語の Stock(シュトック、杖)が日本で「ストック」の音で定着したもので、英語では地域により ski pole・pole などと呼ぶ。登山やトレッキングで使う杖もストックと呼ばれる。

ストックの長さは、身長に合わせて肘がほぼ直角になる高さに調整する。

飲食

ストック(フォン・出汁)

stock

洋食の厨房で、肉・鶏・魚の骨や香味野菜を水でゆっくり煮出した旨みの液体。スープやソース、煮込みの土台になる。フランス語ではフォン(fond、「基礎」の意)と呼び、白いストックと焼いた材料で作る茶色いストックに分ける。和食の出汁にあたる役割を持つ。

仕込みで牛骨のブラウンストックを一晩かけて取った。

不動産(開発・取引)

住宅ストック

housing stock

現存する住宅全体の量を指す。一定期間に新しく供給される住宅(着工戸数などのフロー)と対にして使う。国土交通省は「フローからストックへ」と、新築偏重から既存住宅の活用・流通へ政策の重心を移すことを掲げている。住宅・土地統計調査では空き家も含めた総数が示される。

新築着工は減ったが、住宅ストックの活用を促すリフォーム市場は広がっている。

杖と切り株が、出汁と株式と残高になった

スキー場で手に持つストックも、厨房で取るストックも、決算書に出てくるストックも、元は同じ一語から分かれたものに違いない。カタカナの表記が同じなのだから、そう考えたくなる。

英語の stock に限れば、この見立てはほぼ当たっている。Online Etymology Dictionary によると、stock は中英語の stok、古英語の stocc にさかのぼり、元の意味は「切り株、木の杭、棒、生きている木の幹、丸太」だった。そこから「将来のための蓄え」の意味が15世紀初めに現れ、「会社の出資した資本」は1610年代、「肉を煮出した汁」は1764年とされている。会計、不動産、マーケティングで「たまっている量」を指すストックは蓄えの系統、金融の株式は資本の系統、洋食の厨房のストックは煮出し汁の系統にあたる。

幹がなぜ蓄えになったのか

同じ辞典は、幹の意味と「蓄え」の意味がどうつながったのかは確かでないとも書いている。幹から利益が育つという連想か、かつての「金庫(money-box)」の意味によるのか、という推測が挙がっているだけである。

出汁のほうは想像しやすい。スープやソースの土台になるので、フランス語では「基礎」を意味するフォン(fond)と呼ぶ。幹も土台も、そこから先が育つ根もとという点で似ている。

スキーの杖は別の経路で入った

では、スキーのストックも同じ幹の枝なのか。BE-PAL の解説によると、そうはならない。スキーのストックはドイツ語の Stock(シュトック、杖)が日本で「ストック」の音で定着したもので、英語では地域により ski pole や pole と呼ぶ。英語の stock にも「棒」の意味はあるが、日本語のスキー用語に入ったのはドイツ語の杖のほうである。

つまり日本語の「ストック」には、英語由来の五つの意味と、ドイツ語由来の一つが、同じ表記で同居している。

英語由来の側にも、さらに重なりがある。不動産の「住宅ストック」は、新しく供給される住宅というフローの対になる語として使われる。会計のストックは期間で測るフローの対で、損益計算書に対する貸借対照表の残高にあたる。マーケティングの「ストック型ビジネス」も、都度売り直すフロー型の対である。三つの業界とも、反対側にいるのはフローだ。

スキーのストックだけには、フローという相手がいない。リフトの上で両手に握っているのは、ドイツ語の杖である。