ストレート
ストレート
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
直球(野球)/ストレート(ボクシング)/まっすぐな投球(ボウリング)
straight
野球で、変化しないまっすぐなボール。直球。
競技ごとに「曲がらない」動きの名前として使われる。野球では変化球に対する直球で、スピードや球威を語るときの基本の球種。ボクシングでは腕をまっすぐ突き出す打撃で、前の手で軽く打つジャブに対し、後ろの手で体重を乗せて打つものをストレートと呼ぶことが多い。ボウリングでは、フックボールと対比される、曲がらず直進する投球を指す。
今日の先発はストレートの伸びが良く、変化球に頼らずに押せていた。
ストレートパーマ
straight perm
くせ毛やうねりを伸ばして髪をまっすぐに整える施術、またはその仕上がり。サロンでは薬剤だけで行うストレートパーマと、薬剤に加えてアイロンの熱を使う縮毛矯正を分けて呼ぶことが多い。軽いくせやパーマを戻したい人にはストレートパーマ、強いくせには縮毛矯正が選ばれる。
毛先のうねりが軽いので、縮毛矯正ではなくストレートパーマで十分ですよ。
ストレート債(普通社債)
straight bond
株式への転換権や新株予約権などの付帯条件がない、通常の社債。満期まで利息が支払われ、利率や期日が事前に固定されているのが基本で、略してSBとも書く。転換社債(CB)やワラント債(WB)と区別して呼ぶときに使われる。
今回の起債は転換社債ではなく、ストレート債での発行となった。
ストレートニュース
straight news
論評や解説を加えず、起きた事実を伝える基本の報道記事。重要度の高い情報から順に並べる「逆三角形」で書かれ、後ろを削っても記事が成り立つようにする。会見・発表など掲載日前後の日付が入った「日付モノ」が典型で、解説記事や企画記事とは区別される。
発表当日の夕刊は、ストレートニュースで短く出して、解説は翌日に回す。
ストレートミュート
straight mute
トランペットなどの金管楽器のベルに差し込む、壺のような形をした基本のミュート(弱音器)。金属的な硬く明確な音色になり、クラシックでもジャズでも使われる。カップやハーマンなど他のミュートと区別するための名前で、単に「ストレート」と略すこともある。
このパッセージはストレートで、次の小節からカップに持ち替えてください。
ストレートは、相手の名前で意味が決まる語
楽譜に「ストレート」とあれば、トランペット奏者はベルにミュートを差し込む。美容室で「ストレートで」と頼めば、髪を伸ばす施術の話になる。同じ語から、これだけ別のものが出てくる。
「まっすぐ」という意味が共通しているのだろう、と思いたくなる。しかしミュートの形は壺に近く、まっすぐという形容は当てはまらない。ストレートは単独では何も説明しない語で、それが何かは「ストレートでないもの」の名前を聞いて初めて決まる。
- 野球:変化球に対する直球。曲がったり落ちたりしない球
- ボウリング:フックボールに対する、曲がらず直進する投球
- ボクシング:前の手で軽く打つジャブに対する、後ろの手で体重を乗せて打つ打撃
- 美容:縮毛矯正と分けて呼ばれる、薬剤だけで行う施術
- 金融:転換社債(CB)やワラント債(WB)に対する、付帯条件のない普通社債
- 報道:解説記事や企画記事に対する、事実だけを伝える記事
- 音楽:カップやハーマンなど他のミュートに対する、基本形のミュート
反対側の顔ぶれはばらばらだ。球技では「曲がる」、金融では「転換できる」、報道では「論評が付く」、楽器では「別の形や音色がある」。ただ、何かが加わった形が先にあり、それを除いた素の形に「ストレート」の名前が回ってきたという構図は、どれにも当てはまる。
素の中身は業界で違う。野球やボウリングでは、動きそのものの名前だ。金融では、付帯条件の有無で商品を分ける区別の名前になる。報道のストレートニュースは、重要な順に書き、後ろを削っても成り立つようにするという、書き方の約束ごとまで含んでいる。「飾りがない」が指すのが動きなのか、商品の分類なのか、文章の型なのかは、それぞれ別のことだ。
ミュートはさらに事情が込み入っている。楽器にミュートを差し込んで音を変えているのだから、素とは言いにくい。それでもストレートミュートは、硬く明確な音色になる基本形で、ミュートの中では素の位置にある。加工の中の素、という位置づけだ。
楽譜の「ストレート」を見た奏者が手を伸ばすのは、カップでもハーマンでもない、壺の形のミュートである。