ストローク
ストローク
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
打数(ゴルフ)
stroke
ゴルフで打数として数える、球を打つために行うクラブの前方への動き。クラブヘッドを意図的に途中で止めた場合や、打つことを避けた空振りは、ストロークを行ったことにならない。ストロークプレーは、ラウンドに要した打数の総計で勝敗を決める競技方法。
ストロークプレーなので、18ホールの合計打数で順位が決まります。
行程(エンジンのピストン移動距離)
stroke
エンジンのピストンが上死点(最も上の位置)から下死点(最も下の位置)まで動く距離。シリンダー内径(ボア)との比で、ストロークが長いロングストロークはトルク型、短いショートストロークは高回転型といった特性の違いを語る。
このエンジンはボアよりストロークが長いロングストローク型で、低回転から粘る。
線(パスの輪郭線)
stroke
IllustratorやInDesignなどのDTPソフトで、パス(線や図形の輪郭を決める線)に付ける線の属性。日本語版の画面では「線」と表示される。塗り(フィル)と対になり、線幅、破線、線端(キャップ)、角(ジョイン)、位置(中央・内側・外側)を指定する。
入稿前に、線幅が細すぎるストロークがないか確認してください。
弦を打つ奏法(ギター)・スティックの打法(ドラム)
stroke / strum
楽器によって指す動きが違う。ギターでは、ピックで弦を打つ奏法。腕を下ろすのがダウン、上げるのがアップで、交互に振るのがオルタネイトストローク。ドラムでは、スティックを打つ前と打った後の高さ(高い・低い)の組み合わせで、フル・ダウン・タップ・アップの4種に分ける。
まずは、ダウンとアップを交互に振るオルタネイトストロークで弾いてみましょう。
空振りも1打に数える語が、ピストンの長さと線の太さを指す
ゴルフでは、球を打つために行うクラブの前方への動きを、1ストロークと数える。途中で意図して止めれば数えない。打数として数えているのは、球の行き先ではなく、振るという動きのほうである。
この語をエンジンの世界で聞くと、数えるものが変わる。ところが諸元表に載る「ストローク」は、ピストンが上死点から下死点まで動く距離(ミリ)を指す。シリンダー内径(ボア)より長ければロングストロークで、低回転から粘るトルク型と言われる。同じ語が、動きの数と動きの長さの両方を引き受けている。
三つめはさらに遠い。IllustratorやInDesignで、パスに付ける線の属性が「ストローク」だ。日本語の画面には「線」と出る。ここで測るのは線幅、つまり太さである。振る動きは画面に残らず、跡だけが残っていて、その跡の幅を数字で決める。
音楽にも同じ語がある。ギターのストロークは、ピックで弦を打つ奏法で、腕を下ろすのがダウン、上げるのがアップだ。ドラムでは、スティックを打つ前と打った後の高さの組み合わせで打ち方を分ける。数えるのでも測るのでもなく、振り方を呼び分ける語である。
打数、長さ、太さ、そして振り方。別々の語が同じ綴りになったのだろう、と最初は思う。だが入口は一つらしい。名詞の stroke は中英語の strok、武器などによる「一撃」で、古英語に推定される形をたどると strike と同じ語根に行き着く(Etymonline と英語版ウィクショナリーの語源欄による)。一撃には、振る動きと、動きが通った道のりと、通ったあとに残る跡がある。その三つのどこを指すかで、ゴルフ、ピストン、線に分かれたと読める。ギターやドラムの振り方は動きそのものを指すので、ゴルフと同じ側に入る。ただし、これは四つの意味を並べた私の読みで、分岐の順序を示す資料は見つけていない。
動きを指す用法は早くから確認できる。語源辞典のEtymonlineは、機械の「ひと動き」の意味を1731年までさかのぼる。跡のほうでは、英語版ウィクショナリーが1762年のホレス・ウォルポールの用例を挙げていて、これは絵筆の運びについての文だ。ゴルフとエンジンの意味がいつ定着したかは、確かめた資料に年代がなかった。
スコアカードに打数を書き込む手と、線パネルの幅の欄に数字を入れる手は、同じ語の別の面に触れている。前者は動きを数え、後者は動きの跡を測っている。