略語

SV

エスブイ

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

小売・店舗

スーパーバイザー(店舗巡回指導員)

supervisor

複数店舗を受け持ち、店長を指導しながら地域全体の業績を上げる役職。3〜10店舗ほどを担当し、月に2〜3回各店を回って課題を見つけ、改善案を出す。店長が1店舗の運営に責任を負うのに対し、SVは複数の店を見渡して管理する立場にある。

今月はSVが来店するので、陳列の見直しを先に済ませておこう。

機械・生産

設定値(目標値)

Set Value

温度調節器などの制御機器で、到達させたい目標の値。実際の測定値はPV(現在値)と呼び、調節器はPVとSVの差をもとに出力を決める。PID制御では、この差を比べて出力を0〜100%の間でなめらかに変える。

PVが180℃で止まるので、SVを185℃に上げて様子を見よう。

医療・医学

1回拍出量

stroke volume

心臓が1回収縮するたびに左心室から送り出す血液量。安静時の成人男性で約70mLとされ、心拍数を掛けると1分間の拍出量(心拍出量)になる。心拍数がある範囲を超えて上がると、心臓に戻る血液が減ってSVが下がり、心拍出量もかえって減る。

心拍数は上がっているのにSVが下がっているので、循環の状態を見直したい。

スポーツ・フィットネス

セーブ(野球)

save

野球で、リードを守って勝ち試合を締めくくった救援投手に付く記録。成績表ではSV(またはS)と略す。MLBでは1969年に公式記録となり、日本のプロ野球(NPB)では1974年に導入された。登板数に対するセーブの割合はSV/Gで示される。

守護神の通算SVが歴代1位に並んだ。

20対6の試合にもセーブが付いた

1971年、20対6の試合でロン・テイラーという救援投手にセーブが付いた。14点差の試合を締めて「勝ちを守った」と記録されるのは、おかしくないだろうか。

おかしくなかった。1969年にMLBの公式記録になったときの条件は、リードしている場面で登板し、そのリードを最後まで保つことだけだったからだ。点差も、投げたイニング数も問われない。英語版Wikipediaの「Save (baseball)」によれば、テイラーの例はその条件が生んだ、ごく楽なセーブの代表である。

そのゆるさが改められたのが1974年だった。同じ記事によると、この年に基準が厳しくなり、登板時に同点の走者が塁上か打席にいるか、3イニング以上リードを保つかのどちらかが必要になった。翌1975年には少し緩められて、現在の形に落ち着いている。日本のプロ野球がセーブを取り入れたのも1974年だ(ベースボールチャンネル)。ただ、日本の最初の基準がMLBのどの時期のものと同じだったかは、読めた資料では確かめられていない。

この数字は、試合が終わってから、条件に合うかどうかを数える。先に決めた到達点があるわけではなく、起きたことを後から名づけた記録だ。

同じ「SV」が、工場の温度調節器では逆の向きで働く。SMCの用語解説では、SVは設定値、つまり到達させたい目標の値で、実測値のPVとの差から調節器が出力を決める。180℃で止まるPVを見て、SVを185℃に上げる。数字を先に置き、現実をそこへ寄せる。

小売のSVは人である。スーパーバイザーは3〜10店舗ほどを受け持ち、月に2〜3回各店を回って、課題を見つけて改善案を出す。店のほうは「今月はSVが来る」と知って、陳列を先に直しておく。期日が先にあり、現場がそこへ向けて動くという点では、温度調節器の目標値と同じ向きだ。

野球のSVだけは、先に置かれる目標がない。守護神の通算SVの欄にあるのは、後から条件に当てはめて数えた結果だ。その条件を何度も書き換えたのは、リードを守るという仕事を、数字でどう測るかが決まっていなかったからだろう。

14点差でもセーブが付いた1971年と、同点の走者が必要になった1974年では、同じSVの一つが指すものが違う。成績表の通算の欄に並ぶ数字は、年ごとにどちらの基準で積まれたのかを見て、はじめて読める。