スイング
スイング
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
スイング(ジャズの躍動的なリズム感)
swing
ジャズで、連続する8分音符を均等に刻まず、前の音をやや長く後の音を短く跳ねさせて生まれる、体が自然に動くようなリズム感。1930年代中期、ベニー・グッドマン楽団などがダンス音楽を演奏しはじめた頃にこの語が使われだし、その時代のジャズ(スイング・ジャズ)の呼び名にもなった。
このテーマはイーブンで吹くより、少し跳ねさせてスイングさせたほうが合う。
スイングトレード
swing trade
スイングトレードとは、ポジションを数日から数週間にわたって保有する取引手法です。
株式やFXで、ポジション(買い持ち・売り持ちの状態)を数日から数週間持ち続け、トレンドを分析して値幅を狙う取引手法。1日で売買を終えるデイトレードより長い時間軸で相場を見る。取引の回数が少なく、細かい値動きを見続けなくてよい。
日中は張り付けないので、スイングで数日持つ方針にした。
スイング(野球・ゴルフ:バットやクラブを振る動作)
swing
野球のバットやゴルフのクラブを振る一連の動作。ゴルフではアドレスからフィニッシュまでの一連の動作を指す。
コーチに、ダウンスイングで腕が体から離れるのを直すよう言われた。
スイング(アンサンブルの代役要員)
swing
ミュージカルなどで、アンサンブル(群舞・コーラスの出演者)の複数の持ち場の台詞・振付・立ち位置・ハーモニーを覚え、誰かが休演したときに代わりに入る出演者。出演者が足りない日は、1人で複数の持ち場を兼ねる場合もある。
今日は2人が休演で、スイングが2つの持ち場を兼ねて入る。
スイング(需給調整の産油国/ガス契約の数量の幅)
swing producer / swing contract
石油では、余剰生産能力を持ち、生産量を増減して世界の需給と価格を調整する産油国を「スイング・プロデューサー」と呼ぶ。米エネルギー情報局(EIA)は2012年の記事で、サウジアラビアを世界の主要なスイング・プロデューサーとしている。天然ガスでは、定められた日量の下限と上限の範囲で日々の引取量が変動する売買契約をスイング契約と呼ぶ。
今回の減産では、スイング・プロデューサーとされるサウジの動きが価格を左右した。
スイングで揺れているのは、体か価格か拍か
ゴルフ練習場でスイングを直され、証券口座ではスイングで数日ポジションを持ち、ジャズ喫茶ではスイングを聴く。同じ語なのに、揺れているものはそれぞれ違うらしい。業界ごとに、いったい何が揺れているのだろうか。
ゴルフとバットでは、揺れるのは自分の体とクラブである。アドレスからフィニッシュまでの一続きの動作が、そのまま「スイング」と呼ばれる。
相場では、揺れるのは価格だ。スイングトレードは、上下に振れる値動きの途中を数日から数週間かけて取りにいく手法で。1日で終えるデイトレードより長い時間軸で相場を見る。名前の由来を明記した資料は確認できていない。ただ、英語版Wikipediaの説明は、値動きそのものを「swings」と呼んでいる。
音楽では、揺れるのは時間である。連続する8分音符を均等に刻まず、前を長く、後ろを短く跳ねさせる。演奏者でも楽器でもなく、拍の長さが揺れている。
この音楽の側には、順序の妙がある。デューク・エリントンが「It Don’t Mean a Thing (If It Ain’t Got That Swing)」を書いたのは1931年、録音は1932年2月。ベニー・グッドマン楽団などがダンス音楽を演奏しはじめ、この語が使われだした1930年代中期より、およそ3年早い。曲名は、時代が名を持つ前に、感覚のほうを名指していた。エリントン自身は、題はトランペットのバビー・マイリーの信条だったと語っている。作詞はアーヴィング・ミルズとされる。
エネルギーの取引にもスイングがある。天然ガスでは、日量の下限と上限の範囲で日々の引取量が変動する契約を、スイング契約と呼ぶ。石油では、余剰の生産能力を持ち、生産量を増減して需給を調整する産油国を、スイング・プロデューサーと呼ぶ。揺れるのは量である。
劇場のスイングだけは、何も振れない。ミュージカルでアンサンブルの複数の持ち場を覚え、誰かが休演した日に代わって入る出演者である。Playbillによれば、2017〜2018年のブロードウェイでアンサンブル1,004人のうち323人がスイングだった。『キンキーブーツ』の最初の全米ツアーの男性スイングの一人は、17の持ち場を覚えていたという。ここには、揺れるものが見当たらない。持ち場から持ち場へ移るから、という読みはできる。だがPlaybillに由来の記述はなく、推測にとどまる。
体、価格、拍、量の四つは、どれも往復や振れの話として読める。五つめだけが、その読みに乗らない。
机を指で二回、均等に叩いてみてほしい。次に、最初を少し長く、あとを短く叩く。二回目の叩き方が、1932年の曲名が「なければ意味がない」と言ったものである。