TC
ティーシー
7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
タイムコード
time code
映像の1コマごとに「時:分:秒:フレーム」の番号を振る仕組み。編集やVFXで、素材の特定の場面を正確に呼び出し、映像と音を合わせるために使う。業務用の機器ではSMPTE規格のものが標準で、現場では「TCを合わせる」「TC 01:00:00:00から」のように略して呼ぶ。
このカットはTC 01:02:15:10から使うので、素材のTCを控えておいてください。
トラクションコントロール
traction control
発進や加速時、滑りやすい路面でタイヤが空転しそうになったとき、エンジン出力やブレーキを自動で制御して駆動力を確保する安全装置。ABS(急ブレーキ時にタイヤのロックを防ぐ装置)と組み合わせて搭載されることが多い。メーカーごとに呼び名が異なり、ホンダはTCS、トヨタはTRCと表記するが、二輪車やモータースポーツではTCと略して呼ぶことが多い。
雪道ではTCが作動して、アクセルを踏んでも出力が抑えられた。
定期傭船(契約)
time charter
傭船者がある一定の期間を決めて船舶を傭船する契約をいう。
傭船者が期間を決めて船を借りる契約。船主が船員の手配と船の維持を受け持ち、傭船者は日額の傭船料に加えて燃料代(バンカー)や港費を負担し、航路や寄港地を決める。航海ごとに借りる航海傭船(VC)と対比され、船主から借りる側をTC in、貸す側をTC outと呼ぶ。
この船は来年末までのTCで押さえてあり、燃料代は当社持ちです。
型式証明
type certificate
航空機の型式(機種の設計)ごとに、安全性や環境保全の基準を満たすことを国が確認する証明。日本では航空法12条にもとづき、型式の設計について行われる。型式証明を受けた型式は、1機ごとの耐空証明(個々の機体が飛べる状態にあることの証明)の検査の一部が省略される。
新型機はまだTCが下りておらず、就航時期が決まらない。
トランスファーセンター(通過型物流センター)
transfer center
在庫を持たず、仕分けと積み替えに特化した物流センター。納品先と数量は到着前に確定しており、荷物を受け入れたらすぐ納品先別に仕分けてトラックに積み、配送する。在庫を保管してピッキングや梱包も行うDC(ディストリビューションセンター)と対比される。
生鮮品は保管せずTCで仕分けて、その日のうちに各店舗へ出荷する。
総コレステロール
total cholesterol
血液中のコレステロールの総量を示す臨床検査項目。HDL(善玉)とLDL(悪玉)などを合わせた値で、脂質異常症や動脈硬化のリスクを調べる健診・外来の検査で使う。検査結果表では単位mg/dLで示され、病院ごとに基準値が定められている。
今回の採血はTCが高めなので、LDLも分けて確認しましょう。
テストケース
test case
ソフトウェアテストで、入力・実行条件・手順・期待結果を1つにまとめたテストの単位。テスト仕様書に並べ、バージョンが変わっても同じ確認を繰り返せるようにする。管理表では「TC-001」のようなIDを振って、結果と対応づけるのが一般的。
ログイン画面のTCを30件書き起こして、レビューに回した。
七つのTCを、中身の古い順に並べる
健診の結果表に「TC 212」と印字されている。総コレステロールの値だ。七つあるTCのなかで、いちばん古いのは、この欄の中身ではないか。
並べてみると、そのとおりだった。
- 1769年ごろ:胆石から白い固体のコレステロールが取り出される(総コレステロール)
- 1913年:ニューヨーク・プロデュース取引所が定期傭船の定型書式(NYPE)を発行する(定期傭船)
- 1927年3月29日:米国で初の型式証明が、ビュール社のエアスターCA-3に出る(型式証明)
- 1930年代:米国のトラック輸送で、荷を保管せず積み替えるクロスドックが始まる(通過型センター)
- 1967年:EECO社が「時:分:秒:フレーム」の番号を考案する(タイムコード)
- 1971年:ビュイックがマックストラックを載せる(トラクションコントロール)
- 1983年:IEEEがソフトウェアのテスト文書の標準829を出す(テストケース)
古いといっても、物の年である。TCという二文字がいつから使われたかは確かめていない。それでも、胆石の話は群を抜いている。1769年の発見は公刊されず、年は後の学者の引用から伝わるだけだ。名前をつけたのは1815年のシュヴルールで、ギリシャ語の胆汁(khole)と固体(steros)をつなげた。胆石から出てきたことが、そのまま語源に残っている。
では、この七つに共通の祖先はあるのか。ない。分野も国も時代もばらばらで、最初と最後は200年以上離れている。タイムコードと定期傭船が、どちらもtimeで始まるのは、たまたまだ。Tの部分は time、traction、type、transfer、total、test と分かれ、Cの部分も code、charter、control、certificate、center、cholesterol、case と分かれる。英語の二語を頭文字で縮める習慣だけが、七つを同じ形にした。
縮めたものが消えずに残る例も、消えた例もある。マックストラックは後輪の空転を見つけると点火を止めて出力を落とす方式で、数年で姿を消した。点火を止めた分の未燃焼の燃料が排気に流れ、触媒を傷めるためだ。トラクションコントロールが戻ってきたのは1986年で、燃料と点火を電子で細かく制御できるようになってからになる。
最後に、検査システムを作る会社の机を想像してみる。結果表にTCの欄が正しく出るかを確かめる試験を書くとしよう。試験の項目には、管理表の慣習どおり「TC-001」とIDが振られるだろう。胆石から数えて200年あまり離れた二つのTCが、そこでは同じ一行に並ぶ。結果表の「TC 212」の隣に、「TC-001 合格」と書かれる。