用語

トリミング

トリミング

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

ペット・動物

被毛のカット

trimming

被毛をカットして整えること(グルーミング:シャンプーや爪切り、耳掃除など清潔を保つため全身をケアすること。グルーミングの1つとして、トリミングがある)

出典:J-Net21(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

ペットサロンで、犬や猫の被毛をはさみやバリカンで切り整える施術。シャンプー、爪切り、耳掃除などを含む全身のお手入れ(グルーミング)の一部で、犬種ごとのスタイルや飼い主の希望に合わせて仕上げる。施術する人はトリマーと呼ばれ、トリミングの料金はカットとシャンプーを合わせたコースで示されることが多い。

プードルのトリミングは、シャンプーとセットで予約をお願いします。

写真・カメラ

切り取り(構図の調整)

cropping

撮影後に写真の一部だけを切り取り、構図を整える編集作業。画面の端に写り込んだ余計なものを除く、被写体を大きく見せる、縦横比(アスペクト比)を変えるといった目的で使う。切り取った分だけ画素数が減るため、大きく引き伸ばす用途では撮影時の構図で決めておくのが基本とされる。

端に写り込んだ看板は、トリミングで外して納品します。

半導体・電子部品

トリミング(抵抗値の調整)

trimming

製造ばらつきで生じた部品や回路の特性値を、目標値に合わせ込む工程。チップ抵抗器では、抵抗膜にレーザーで溝(トリミング溝)を刻んで抵抗値を測りながら目標値まで上げる。アナログICでも、抵抗素子の調整で基準電圧などのばらつきを補正するために行われる。削ると値は戻せないので、一方向にしか調整できない。

このロットはトリミング後の抵抗値が公差に収まっていない。

飲食

トリミング(生肉の表面の削ぎ落とし)

trimming

生食用の肉を扱う際に、細菌が付いている可能性のある肉の表面を削ぎ落とす作業。かつてはユッケなどを提供する飲食店に求められた衛生上の処理だったが、2011年の食中毒事件を受けて同年10月に生食用牛肉の規格基準が施行され、表面を削り取るトリミングだけでは生食用として提供できなくなった。

以前はトリミングだけでユッケを出せたが、今は表面の加熱殺菌が必要だ。

日用品・消費財

縁どり・装飾(服飾)

trimming

帽子の縁やドレスの裾・袖口などをテープなどで縁どりすること。また、その縁どり。

出典:デジタル大辞泉(小学館)/コトバンク

アパレルで、衣服の端を本体とは別の色や素材で飾る縁どりを指す。打ち合わせ・裾・袖先などに施すのが典型で、こうした飾り縁のあるコートは「トリミングコート」と呼ばれる。広くは、仕上げの段階で取り付ける装飾品の総称としても使われる。

このジャケットは袖口のトリミングにレースを使っています。

スポーツ・フィットネス

トリミング(サーフィン・パラグライダー・ダイビング)

trimming

競技によって、位置・速度・浮力を細かく整える操作を指す。サーフィンでは波に乗りながら板をリズミカルに動かしてポジションを保つこと、パラグライダーではトリマー(速度を調整する装置)で飛行速度を調整すること、ダイビングでは肺の空気で浮力を微調整するテクニックを指すと、各競技の用語集に載る。

風が強いので、パラグライダーはトリマーでトリミングして速度を落とした。

削るほど値が上がる、削っても足りない

チップ抵抗器の工場では、抵抗膜をレーザーで削っている。削るのは、抵抗値を上げるためだ。

膜が細くなれば電流の通り道が狭まり、値は増える。だから目標より低めに作っておき、測りながら溝を刻んで、ちょうどの値まで寄せていく。行きすぎても、削った膜は戻らない。電子部品の現場でトリミングといえば、この一方通行の調整をいう。

手を入れて仕上げるという点では、ほかの五つの現場も同じ顔をしている。ところが、仕上げたあとの事情がそれぞれ違う。

ペットサロンでは、犬や猫の被毛をはさみやバリカンで切り整える。犬種ごとのスタイルに寄せ、飼い主の希望に合わせて仕上げる。毛は伸びるから、仕上がりが気に入らなくても取り返しがつく。抵抗器とは正反対だ。

写真は、その中間あたりにある。撮影後に端の看板を外す、被写体を大きく見せる、縦横比を変える。切り取った分だけ画素数は減るので、大きく引き伸ばす用途なら撮影時に構図で決めておくのが基本とされる。減った画素は、あとから足せない。

服飾では、削るのではなく足す。コートの打ち合わせや裾、袖先を本体と別の色や素材で縁どることを、アパレルではトリミングという。デジタル大辞泉は「帽子の縁やドレスの裾・袖口などをテープなどで縁どりすること。また、その縁どり。」と説明している。縁に別の素材を付けた服を指して「トリミングコート」とも呼ぶ。同じ語が、膜を細くする作業にも、布の端に何かを足す作業にも使われている。

スポーツでは、切ることも足すこともない。サーフィンでは、波に乗りながら板をリズミカルに動かして位置を保つ。パラグライダーでは、トリマーという装置で飛行速度を調整する。ダイビングでは、肺に入れる空気の量で浮力を微調整する。各競技の用語集に載るこれらの意味は、いずれも動いている最中の細かな加減である。

食品の現場のトリミングは、ここまでのどれとも性格が違う。生で食べる肉の、菌が付いているかもしれない表面を削ぎ落とす作業である。かつてはこれで生食用として出せた。

それが変わったのが2011年だ。焼肉チェーンのユッケで食中毒が起き、その年の10月に生食用牛肉の規格基準が施行された。いまは、表面を削り取るだけでは生食用として提供できない。基準が求めるのは、肉塊の表面から1cm以上の部分まで60℃で2分以上の加熱である。

削れば安全になる、という長年の手当てが、削るだけでは足りないと法令で決まった。

抵抗器の工場は、削りながら測る。値が目標に届いたところで止められる。ダイバーも、吸って吐いた分だけ体が浮き沈みするので、その場で効き具合がわかる。食肉のほうは、削ったあとの肉を眺めても、菌が残っているかどうかは目ではわからない。基準が温度と時間という数字で書かれているのは、測れない仕上がりを、測れる手順に置き換えたからだと私は読んでいる。

どの現場でも、手は同じように動く。違うのは、手を入れた結果をその場で確かめられるかどうかだ。