TS
ティーエス
7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
トランスポートストリーム
Transport Stream
デジタル放送で映像・音声・番組情報を1本の信号にまとめて送るための形式(MPEG-2 TS)。データを188バイト固定長のTSパケットに分け、各パケットにPIDという識別番号を付けて中身を見分ける。日本の地上波・BSデジタル放送をはじめ、多くのデジタル放送で採用され、ファイルの拡張子「.ts」としても目にする。
このレコーダーは放送のTSのまま録画できる。
ISO/TS 16949(自動車産業向け品質マネジメント規格)
Technical Specification(ISO/TS 16949)
ISO/TS 16949 の「TS」は、ISOが国際規格(IS)とは別に出す技術仕様書(Technical Specification)の区分を示す。自動車業界団体IATFが1999年にISOの品質マネジメント委員会(ISO/TC 176)と共同で作り、自動車のサプライチェーンでばらばらだった評価・認証の仕組みをそろえることを目指した。2016年10月に IATF 16949 へ置き換わった。
取引先から、TSの認証を取っているかを確認された。
引張強さ
Tensile Strength
材料を引っ張る試験で、試験片が耐えた最大の力を元の断面積で割った値。材料証明書(ミルシート)の機械的性質の欄に、降伏点(YP)などと並べて「TS」と書かれる。金属材料の引張試験の方法は JIS Z 2241 に定められている。
ミルシートのTSの値が、発注した規格の範囲に入っているかを確認した。
三尖弁狭窄症/トゥレット症候群
Tricuspid Stenosis / Tourette Syndrome
循環器では三尖弁狭窄症の略で、右心房から右心室への血流が弁口の狭小化で妨げられる病態を指す。一方、神経・精神科領域ではトゥレット症候群の略で、運動チックと音声チックが1年以上続く病気を指す。同じ「TS」でも、領域によって別の病名を指す。
心エコーでTSを疑う所見があり、循環器内科にコンサルトした。
チミジル酸合成酵素
Thymidylate Synthase
DNAの材料であるチミジンの一リン酸(dTMP)を、dUMPに葉酸由来のメチル基を渡して作る酵素。この経路は細胞内でチミジン三リン酸(dTTP)を新たに作る唯一の供給源とされ、DNAの複製や修復に必要なdTTPを支える。5-FUなどの抗がん剤がこの酵素を阻害することから、遺伝子名TYMSとともに論文で「TS」と略される。
がん細胞株でTSの発現量を比べ、5-FUへの感受性との関係を調べた。
タイプスクリプト
TypeScript
TypeScript is JavaScript with syntax for types.
JavaScriptに型の構文を加えたプログラミング言語で、Microsoftが開発したオープンソース。書いたコードはJavaScriptに変換して動かす。ソースファイルの拡張子が「.ts」で、開発現場では言語名を略して「TSで書く」「TS化する」と言う。
既存のJSのコードを少しずつTSに置き換えている。
トロピカルストーム(気象庁RSMC東京の階級)
Tropical Storm
気象庁(RSMC東京)が北西太平洋の熱帯低気圧を最大風速(10分間平均)で分ける階級の一つで、34ノット以上48ノット未満のもの。下にTD(34ノット未満)、上にSTS(48ノット以上64ノット未満)とTY(64ノット以上)がある。ベストトラックや国際向けの英語資料では階級が「TS」と記され、TS以上になると国際番号が付けられる。国内向けの発表では、TS以上をまとめて「台風」と呼ぶ。
ベストトラックの階級がTSに上がった時点で、国際番号が付けられた。
TS認証のTSは、17年間「国際規格」ではなかった
部品メーカーの事務所に、紙が二枚届いたとしよう。一枚は取引先からの要求事項で、「TS認証の取得状況を回答のこと」とある。もう一枚は入荷した鋼材のミルシート(材料証明書)で、成績欄に「TS」と数値が並んでいる。
同じ机の上の同じ二文字が、まるで別のものを指している。
鋼材のほうは単純だ。TSは引張強さで、材料を引っ張る試験で耐えた最大の力を、元の断面積で割った値である。ミルシートでは、降伏点のYPと並んで書かれる。
認証のほうのTSは、Technical Specification、つまり技術仕様書の略だ。ここで引っかかる。「仕様書」という名前は、規格になる手前の、仮の置き場のようではないか。ISO/TS 18173(2005年)の序文によれば、国際規格は会員団体の75%以上の賛成で出るのに対し、技術仕様書は技術委員会の委員の3分の2の賛成で出る文書だ。公表の3年後に見直して、延長するか、国際規格にするか、廃止するかを決め、延長した場合は、さらに3年後の見直しで国際規格にするか廃止するかを決めるとも書かれている。ただし古い文書の記述で、現行の手続きまでは確かめていない。
ところが、ISO/TS 16949は1999年に自動車業界団体IATFがISOの委員会と共同で作り、IATF 16949に置き換わる2016年まで、その名前で使われ続けた。17年である。その間に2009年版が出るなど版は改められたが、区分は技術仕様書のままだった。なぜ国際規格にならなかったのか、公式の説明は見つけられなかった。
さらにややこしいのは、今の認証がもうISOの技術仕様書ではないことだ。IATF 16949は、ISOのTSではない。それでも、「TS」という呼び名が今も使われる場面があるのかもしれない。そうだとすれば、中身の区分が消えたあとも、呼び名のほうだけが残っていることになる。ただ、そうした言い方を確かめた資料は見つけていない。
同じ二文字は、ほかの机にも出る。録画機の拡張子「.ts」は、188バイトずつに分けた放送の信号(トランスポートストリーム)だ。開発者の机では、同じ「.ts」がTypeScriptのソースファイルを指す。循環器の領域でTSといえば三尖弁狭窄症で、トゥレット症候群の略もTSだ。研究室の論文ではチミジル酸合成酵素がTSと略され、台風の英語資料では、最大風速が34ノット以上48ノット未満の階級がTS(トロピカルストーム)だ。
冒頭の二枚に戻ると、ミルシートのTSは引張強さのまま変わらない。要求事項のほうのTSは、もしISO/TS 16949のことなら、2016年10月に置き換わった規格の名前を、そのまま呼んでいることになる。