VC
ブイシー
8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ベンチャーキャピタル
Venture Capital
未上場の新興企業の株式を取得して出資し、上場や売却で値上がり益を得ることを狙う投資会社・投資ファンド。出資と同時に、出資先への経営面の助言も行う。投資会社や投資ファンドそのものを「VC」と呼ぶ。
シード期はVCから資金調達し、シリーズAで次の出資者を探す計画だ。
ボイスコイル
Voice Coil
スピーカーやサブウーファーの磁気ギャップ内にあるコイル。電流が流れると磁石と作用して音を出す。カーオーディオのサブウーファーでは、磁気回路が1つのものをSVC、2つのものをDVCと呼び分ける。
ウーファーの音が割れるのはVCがこすれているからかもしれない。
肺活量
Vital Capacity
呼吸機能検査(スパイロメトリー)で、最大限に息を吸ったあとゆっくり吐き出せる空気の量。予測値に対する実測値の割合が%VCで、低いと拘束性換気障害(肺が膨らみにくい状態)を疑う目安になる。
検査結果は%VCが70%と低めで、拘束性の障害が疑われる。
ビスカスカップリング
Viscous Coupling
シリコンオイルを封入した継手で、4WD車の前側と後ろ側の回転差に応じて駆動力を配分する。
このリアルタイム4WDは前後のシャフトをVCでつないでいて、前後に回転差が出ると駆動力が配分される。
検証可能な資格情報
Verifiable Credentials
W3Cが標準化した、資格・身分などの主張を電子署名で真正性と改ざん防止を保証して表すデータ形式。発行者が署名し、保有者がデジタルウォレットに保管し、検証者が発行者へ問い合わせずに署名を確かめる三者構成をとる。デジタル庁もガバナンスの検討を進めている。
卒業証明をVCで発行すれば、企業は大学に問い合わせずに真偽を確認できる。
ビタミンC(化粧品成分・商品名)
Vitamin C
化粧品の成分名や商品名で、ビタミンC(アスコルビン酸)やその誘導体を略した表記。安定性や浸透性を補うため別の分子を結合させた誘導体は、3-O-エチルアスコルビン酸を「VCエチル」、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを「VC-IP」と呼ぶように、略称の一部にVCが使われる。「VCセラム10」のように、美容液の商品名にも入る。
このブランドのVCセラムは、ビタミンC誘導体を配合した美容液だ。
塩化ビニル(モノマー)/炭酸ビニレン
Vinyl Chloride / Vinylene Carbonate
化学物質の略称で、語源の違う2つがある。ひとつは塩化ビニルモノマー(VC、VCMとも)で、重合させて塩化ビニル樹脂(PVC、塩ビ)にする原料。もうひとつは炭酸ビニレンで、リチウムイオン電池の電解液に少量加え、負極に保護被膜(SEI)をつくらせる添加剤。
この電解液はVCを少量加えて、負極に被膜をつくらせている。
仮想チャネル
Virtual Channel
1本の物理回線の上に論理的に設定する通信路。ATM(非同期転送モード)ではセルのヘッダにVPI(仮想パス識別子)とVCI(仮想チャネル識別子)を入れ、その組み合わせでVCを一意に決める。
このATM回線はVPIとVCIを設定して、拠点ごとに別のVCを割り当てている。
年がわかる中では、いちばん古いVCは肺のほうだった
「VCが足りない」と言われたら、何が足りないのか。出資の話なら資金で、スピーカーならコイルの性能で、呼吸機能検査なら吐き出せる息の量になる。
この二文字には八つの意味がある。そのうち、語や論文、組織としての年を確かめられたのは四つで、最初に生まれたのはどれだろう。略称VCの初出ではなく、その概念が現れた年を並べる。ベンチャーキャピタルに違いない、と私は思った。資金調達の記事でいちばん目にするし、略語として一人歩きしているのも、明らかにこれだ。
違った。年を確かめられた中では、最古は肺活量である。イギリスの外科医ジョン・ハッチンソンが1846年に発表した論文で、スパイロメーター(肺の空気量を測る器械)とともに vital capacity の語を作ったとされる。何の語を作った人かは資料によって書き方が分かれるが、1846年の論文が出発点という点は一致している。検査結果に「%VC」と書かれているとき、その元の語 vital capacity は1846年から使われている。略称としての使い始めがいつかは、確かめられていない。
次に古いのはボイスコイルだろう。GEのチェスター・ライスとエドワード・ケロッグが1925年に発表した論文は、紙のコーンをボイスコイルで駆動するスピーカーを扱ったものと紹介されることが多い。コイルそのものはこれより前からあったかもしれないので、ここで数えるのはこの論文の年である。コーン紙の根元でコイルが磁石の間を前後する、あの構造だ。サブウーファーのSVCやDVCは、磁気回路が1つか2つかの呼び分けにすぎない。
ベンチャーキャピタルが来るのは、そのあとになる。1946年にボストンでアメリカン・リサーチ・アンド・デベロップメントが設立された。近代的なベンチャーキャピタルの草分けとされる会社だ。ただし「最初」の条件は資料によって違う。ここでは、家族の資産に頼らない資金を集めた最初、という書き方に従った。
いちばん新しいのが検証可能な資格情報(Verifiable Credentials)で、W3Cの第2版が勧告になったのは2025年5月である。卒業証明を大学に問い合わせずに確かめる、という使い方は、ごく最近の話だ。
車のVC(ビスカスカップリング)は、シリコンオイルを封入し、前後の回転差に応じて駆動力を配分する継手である。いつ生まれたかは確かめきれなかったので、ここでは順位をつけていない。化粧品成分のビタミンC、化学物質の塩化ビニルと炭酸ビニレン、通信の仮想チャネルも同じで、略称がいつからあるのかを示す資料は見つけていない。
病院でもらった検査票の「%VC」と、投資家向けの記事の「VC」と、卒業証明の「VC」。同じ二文字で、年を確かめられた中ではいちばん年上の、1846年の語である肺活量と、いちばん年下の2025年の資格情報が並んでいる。