WB
ダブリュービー
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ホワイトバランス
white balance
この色温度による影響を補正するのがホワイトバランス(WB)調整です。
光源の色温度によって被写体の色が偏るのを補正し、白いものを白く写すための調整。カメラにはオートのほか、太陽光・白熱灯・蛍光灯など、光源に応じたモードを選ぶ設定がある。
室内の電球の光でオレンジに寄ってしまったので、WBを白熱灯に切り替えて撮り直した。
ウェスタンブロッティング
Western blotting
特定のタンパク質を検出・定量する基本的な実験手法。試料をSDS-PAGEで分子量ごとに分離し、膜(ニトロセルロース膜やPVDF膜)に転写して、目的タンパク質に対する抗体で調べる。別名はイムノブロット(IB)で、研究室では単に「ウェスタン」とも呼ぶ。
ノックダウンの効き具合をWBで確かめて、バンドが薄くなっているか見る。
ワイヤボンディング
wire bonding
半導体の実装・後工程で、チップの電極(パッド)と基板またはリードフレームを、金・銀・銅などの極細の金属ワイヤでつなぐ接続方法。ICの内部と外部を電気的につなぐ役割を持ち、実装の現場ではWBと略されることがある。
このCOB実装はWB接続なので、チップの電極と基板パターンの位置をワイヤの引き回しに合わせて決める。
重量重心
weight and balance
航空機の重量と重心位置を、定められた制限の範囲内に収めるための管理と計算。最大重量を超えると機体の構造や性能に影響し、重心が承認範囲の外にあると操縦が難しくなる。出発前に搭載物や燃料から計算して確かめる。英語の資料では W&B のほか、WB とも略される。
貨物の搭載位置を変えたので、出発前にW&Bを計算し直して重心が範囲内か確かめた。
運送状
waybill
運送会社が荷主との間で作る、貨物の内容・経路・運賃・荷送人と荷受人の連絡先などを記した輸送書類。運送会社と荷主の間の運送契約にあたる書類として扱われる。英語の用語集では Waybill (WB) と見出しに略記が使われる。
荷物の追跡のために、WBの番号を荷主から教えてもらった。
バランスを名乗るWBは二つ、直す先が違う
WBの五つの意味のうち、Bが「バランス」なのは二つある。写真のホワイトバランスと、航空の重量重心(weight and balance)だ。名前に同じ語を持つなら、釣り合わせているものも似ているのだろうか。
先に写真から見る。室内の電球の光の下では、被写体がオレンジに寄る。パナソニックのデジタルカメラ講座は、「この色温度による影響を補正するのがホワイトバランス(WB)調整です。」と説明している。光源の色温度で色が偏り、それを、白いものを白く写すことで打ち消す。カメラには太陽光・白熱灯・蛍光灯と光源ごとのモードがあり、使う人は光に合わせて選ぶ。
偏りを直す。航空のWBも、そういう仕事だろうと思った。
ところが、国土交通省の資料が書いているのは別のことだった。航空機の重量と重心位置を、定められた制限の範囲内に収める。目指す先は白のような一点ではなく、範囲である。最大重量を超えれば機体の構造や性能に響き、重心が承認された範囲の外にあれば操縦が難しくなる。裏返せば、範囲の中なら偏っていてもよい。写真のWBが偏りを消す方向に働くのに対して、こちらは偏りが枠からはみ出さないことを確かめる。
確かめる時期も違う。重量重心は、出発前に搭載物と燃料から計算する。貨物の搭載位置を変えたら、計算し直す。写真なら、電球色に染まった画面を見て、WBを白熱灯に切り替えて撮り直せる。
英語の資料では、重量重心はW&Bのほか、WBとも略される。「&」が省かれてWBになる。
残る三つは、Bが別の語だ。生命科学のウェスタンブロッティングは、SDS-PAGEで分子量ごとに分けたタンパク質を膜に写し取り、目的のタンパク質に対する抗体で調べる実験で、研究室では単に「ウェスタン」とも呼ぶ。半導体の実装では、ワイヤボンディングが、チップの電極と基板を金・銀・銅などの極細のワイヤでつなぐ。物流の運送状(waybill)は、貨物の内容・経路・運賃を記した書類で、運送会社と荷主の間の運送契約にあたるものとして扱われる。膜、ワイヤ、紙。どれも釣り合いとは関係がない。
だから、W、Bの二文字で呼ばれる五つのうち、「釣り合い」を名乗るのは二つだけで、その二つも、一方は白という一点に寄せ、他方は枠に収める。
室内で撮った写真がオレンジに寄っていたら、メニューを開いてWBを替え、もう一枚撮れる。貨物の位置を動かした機体は、出発前に計算し直して、重心が範囲内かを確かめる。同じBalanceの頭文字でも、直せる偏りと、先に確かめておく偏りがある。