略語

WIP

ウィップ

2つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

会計・税務・監査

仕掛品

Work In Process / Work In Progress

仕掛品(しかかりひん)とは会計上の勘定科目で、製造途中の段階で未完成の状態の製品を指します。

出典:辻・本郷 税理士法人「仕掛品とは」

製造途中でまだ完成していない製品を表す勘定科目。会計上は資産(棚卸資産の一つ)として扱われる。同じく製造途中でも、出荷や販売ができる状態のものは半製品として区別される。

期末の棚卸で、加工中のロットをWIPとして評価し、仕掛品勘定に振り替えた。

IT・システム開発

仕掛り作業・進行中の作業

Work In Progress

アジャイル開発やカンバンで、着手済みで未完了のタスクの数や状態を指す。同時に抱える数が増えると完了が遅れるため、列ごとに「WIP制限」という上限を置き、上限に達したら新規着手を止めて流れの詰まりを見えるようにする。

レビュー待ちが溜まっているので、レビュー列のWIP制限を3にして新規着手を止めた。

帳簿では資産、カンバンでは詰まりのしるし

製造の途中にある品物は、決算書では資産に数えられる。ところがカンバンのボードでは、途中のまま抱えている作業を数えて、これ以上増やすなと上限を置く。同じWIPを、片方は積み上げ、片方は減らそうとしている。

帳簿の側から見る。辻・本郷 税理士法人の解説によれば、材料費や人件費はそのままでは費用だが、仕掛品に振り替えれば資産として計上できる。完成すれば売上を生む品物なので、「棚卸資産とみなす」のだという。つまり仕掛品勘定は、ここまでに使ったお金を、売れる日まで費用にせず持ち越す箱である。見ているのは金額だ。

ボードの側が見ているのは時間である。InfoQ の解説では、カンバンが依拠する考え方の一つにリトルの法則があり、サイクル時間(一つの作業が着手から完了までにかかる平均時間)は、WIPに比例し、スループット(単位時間あたりの完了数)に反比例するとされている。手持ちが増えれば、一つあたりの完了は遅れる。レビュー待ちが溜まった列に上限を置くのは、新しく始める前に、すでに始めたものを終わらせるためだ。

取り違えは起きないのだろうか。会計のWIPを「減らすべきもの」と読めば誤りだし、ボードのWIPを「資産」と読んでも誤りになる。どちらも未完成の品を指していながら、片方は金額の持ち越し先、片方は流れの詰まり具合を測る数だからだ。

この二つは、もとは同じ工場にいた。国内の解説(issoh)は、カンバンをもともと製造現場の合図で、後工程が使った分だけ前工程に作らせる引っ張り方式を板やカードで伝える道具だったと説明している。源流はトヨタ生産方式だという。製造の現場には、仕掛品を帳簿に載せる経理と、仕掛品を溜めない現場が、最初から同じ部屋にあったことになる。

知的労働のためのカンバンが形になったのは、同じ記事によれば2006年、米Corbis社のチームだった。誰が主導したかは、その記事には書かれていない。ともあれ、このとき「仕掛り」という言葉は、工場の床を離れて、ソフトウェアのタスクを数える語になった。経理のほうは、仕掛品勘定という名のまま、貸借対照表に残った。

期末に加工中のロットを仕掛品へ振り替える経理担当と、レビュー列に並んだカードの枚数を見て新規着手を止めるチーム。数えている対象はどちらも「まだ終わっていないもの」で、数えて何を決めるかだけが違う。